けふの大福帳。


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2003年04月15日(火)    誘拐

ボクの前でリードを振った。

僕の前でしっぽを振った。



首輪にリードを繋ぐ、しっぽは振り切れそうになる。
行こう。行こう。早く。早く。

靴ひもを結びなおす。
じれったい。でも待ってる。ボクいい子。

ガチャン、自転車のカギを外す。カラカラと車輪が回る。
今日は自転車?ボク走っていい?

「行ってきまぁすっ」

メタリックブルーのマウンテンバイク。こないだの誕生日に買ってもらった。
その横をボクは走る。



ちらっと横をみる。黒い背中の毛が揺れてる。
アスファルトの上を走る足音。ちょっとツメが伸びてるのかもしれない。

「今日は少し遠くまで行こう」

荷物は持った。
コイツのトイレ用具。ペットボトルにつめた水。フード少し。それから僕のサイフ。



自転車は止まらない。
ボクの足がすこしゆっくりになる。それから止まる。

「こっちだよ、今日はこっち。・・・つかれた?」

違うよ。そっちじゃないよ。あっち!

「じゃぁ、僕も少し歩いてく」

ボクたちは一緒に歩いた。結局、こっち、に向かって。



遅くなった。もう暗い。
僕たちは歩いたり、走ったり。休憩しながらここまで来た。
知らないところを行くのは楽しい。でも、暗くなるとさみしい。公園のブランコ前なんて、なおさらかもしれない。


「もういいかな?」

尻ポケットに入れたケータイを出す。メール以外は、実はあんまり使わない。

宛先:おかあさん
件名:誘拐
本文:オマエノムスコハ ユウカイシタ。イチオクエンヨウイシロ


なんで件名が漢字かと言うと、ユウカイ じゃカッコ悪い気がするから
なんで本文がカタカナかと言うと、その方が雰囲気でるだろ?

送信。

液晶のバックライトが光る。紙飛行機が飛んでいく。



おなか空いた。
ボクが訴えると、ちょびっとばかしのドッグフードを出してくれた。
ボクはもう二歳になるんだけど。。。

食べ尽くしておかわりをせがむ。
足りない。足りない。ガウガウガウ。

ドッグフードはもう出てこなかったけど、ボクの頭の上に手が置かれた。
地べたに座っているから、ボクも横に寝そべることにした。
膝の上に顔をのせる。

ごはんが出てこないなら、膝の上にヨダレをたらしてやる。



さすがにちょっと疲れた。これ以上は走れない。
僕はとがった耳の間に手を置いて、そのまま後ろへ撫でてやる。
ふさふさした毛並みが気持ちいい。

「お前がいたから、ここまで来れたな」



それから、懐中電灯の明かりが僕らを照らすまで、そこから動かなかった。
僕たちは寝てたんだと思う。

浅い眠りの中、たぶん自転車をこいで、もっと遠くまで行っていた。
懐中電灯なんかに、見つからないところまで。










・・・・・・★・・・・・・★・・・・・・★・・・・・・

んーっと。
犬はシェルティのトライをイメージして書いてた。

てんゆもちっさいころに犬がいたら、一緒に遠出してたかもしんない。
でも、てんゆはコイツらほど根性がない子供だったと思うので、きっと途中でザセツなんかしてたと思う。

帰り道の心配とか、そんなん考えちゃうと、遠くへなんて行けない。
虎鉄と散歩できたら楽しいだろーなぁ〜

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