こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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| 2004年08月31日(火) |
お伽話【流れ星を食べる怪物】 第一話 |
お伽話【流れ星を食べる怪物】
第一話
昔々あるところに、小さな村がありました。
村人たちは、いがみ合うこともなく、 平和に暮らしていましたが、 一つ、大きな問題を抱えていました。
その問題とは、 ここ数年、ひでりが続き、雨が降らないため、 農作物が育たず、 大飢饉に見舞われているのです。
当然、食べ物は少なく、 生まれて間もない赤ん坊が死んでしまうことも 珍しいことではありませんでした。
毎晩、村長さんはじめ村の若い衆が集まり相談しますが、 いっこうに良い方法は浮かびませんでした。
ある日、いつものように村長さんはじめ 村の若い衆が集まり相談していると、 一人の村人が、空が黄金色に光っていることに気付きました。
村人A『ありゃ〜ぁ 夜だというのに昼間のように光ってるさ』
村人B『どうしたぁ?ホントだぁ ありゃ神社の方ださ』
村長さんはじめ、村人が黄金色に光っている方へ行ってみると 神社の屋根から、 ひとすじの光が空に伸びていました。
村人たちが不思議そうに空を眺めていると、 その光をつたって 白い布を体にまとったヒゲの長い老人が、 村人たちのもとへ降りてきました。
身にまとった白い布は、眩しいくらいに光を放ち、 小鳥が肩で羽を休め、 ヒゲは顔を隠してしまうくらい長くて真っ白でした。
村人C『こりゃ〜神様に間違いないさぁ〜』
村人D『神様、お願いします。この村を、私たちを助けてください。』
一同『お願いします。』
村長さんはじめ村人は ひざまずき、その老人にお願いしました。
老人は、村長さんはじめ村人たちを見下ろしながら言いました。
老人『明日から毎晩、流れ星がこの村の空を流れる。 その流れ星に3回願うことができたとき、 そなたたちの願いはきっと叶うであろう。 ただし、流れ星は一晩に一度しか流れないから よ〜く見ておくんじゃぞう〜』
そう言うと老人は、 再び、光を放ちながら空に消えていきました。
〜つづく〜
| 2004年08月30日(月) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 最終回 |
最終回
中年の男性と契約したとき、 住むところも用意してくれた。
15階建ての高層マンション。
ここは、 前住んでいたところより、部屋の広さが3倍もある。
私にはもったいないくらい。
案の定、その半分も使い切れてない。
どこか、居心地が悪かった。
その部屋の豪華さに、 見下されてるような気分になる。
このマンションには、屋上があった。
部屋の居心地の悪さとは対照的に、 私はこの屋上が好きだった。
この屋上から見える朝日、 そして夕日。
太陽だけは、 昇るときも、沈むときも、 私を見下すのではなく、 温かく見守ってくれている気がした。
イヤなことがあると、 早起きして屋上に来た。
朝からテンションの高い小鳥の声 朝だというのに隠れ損ねた月 ビル群をせわしなく駆け抜ける朝の光。
そのすべてが、 夜の汚れを浄化しているようだった。
冷たくて、少し湿気を含んだ朝の空気。
胸いっぱいに吸い込めば、 私自身も、 少しはキレイな身体に戻れる気がした。
彼に抱かれた夜から そして、彼の【運命】を知った夜から一夜明けた。
早起きして、屋上に来てみた。
穏やかなスピードで流れる雲、 いつもより高く、吸い込まれそうな空
一夜明けても、 私の気持ちに変わりはなかった。
【運命】は変えられない。
それでも、 あの優しい彼を、 人殺しにしたくない。
彼と出会い、 人を愛する素晴らしさを知り、
その人に抱かれる幸せを実感できたから。
生まれてきて良かったと、初めて実感できたから。
私に引き金を引くとき 彼が言った一言を思い出す・・・。
『今日は、私があのスープを飲みます』
私は立ち上がって、思いっきり背伸びをした
〈【運命は変えられる】って言うけど、多分それは違う〉
太陽にかざすように手を広げ、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
〈仮に、運良く打開したとしても、〉
そして、吸い込んだ空気を全て残さず吐き出した。
<【頑張って打開したその状況】が結果的に運命なわけだから、 結局、運命は変えられないんだよ>
クツを脱ぎ、フェンスに向かって歩き出す。
<人の手によって変えることが出来るのは、2つだけ・・・生と死>
思った以上に高かったフェンスに足をかけ、乗り越える。
<中出しするかゴム付けるかは、その人のサジ加減>
さっきの場所より風が強く、乱れる髪を右手でおさえた。
<銃口を口にくわえて引き金引くかも、その人のサジ加減>
空を見上げ、太陽の光に目を細めて笑った。
『愛する人のために自ら命を絶つのも、私のサジ加減』
そして、彼の笑顔を思い出し、太陽めがけて一歩踏み出した。
【運命】を変えるための・・・一歩。
サイエンスフィクション【春子(ハルコ)】 〜完〜
| 2004年08月21日(土) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第13話 【運命】の開示�� |
第13話 【運命】の開示��
私が見た彼の【運命】は、 中年の男性とのやりとりからはじまった。
中年の男性が、 何かを指示し、 小さな紙袋を手渡した。
その瞬間、彼の表情がこわばる。
情景は変わる。
あの黒塗りの車の中、 いつもの送り迎えをしているのだろう。
私は、彼に笑顔で話しかけている。 でも、彼がいつもと雰囲気が違うのがわかる。
いつも以上に悲しい顔で、 いつも以上に優しくしてくれる。
車は、いつもと違う道を進んだ。
しばらくして、彼は車を止める。
そこはどこかの山の中。 見下ろすと、きれいな夜景が広がっている。
私はその夜景に見とれている・・・フリをしている。
彼は、黒い革の手袋をはめ、 あの紙袋から何かを取り出した。
彼は私の名前を呼んだ。 初めて名前を呼んでくれた。
振り返ると 彼が拳銃を握り、 銃口を私に向けている。
そして、 【一言】だけつぶやくと、
彼は引き金を引いた・・・。
撃った瞬間、 彼はあの優しい笑顔を浮かべていた。
私が好きな、あの優しい笑顔。
これが、彼の【運命】であり、 同時に私の【運命】だった。
変えることが出来ない【運命】
愛する人に殺される【運命】
それは私にとって悲しくないし、つらくもなかった。
私のような人間なら、 いつ殺されてもおかしくない。
誰の役に立つ訳じゃないし、 生きている価値なんて、さほどあるとは思えない。
だからこそ、 どこの誰かわからないような人ではなく、 彼自身の手で殺されるこの【運命】は、 私にとってどれだけ幸せなことだろう。
それでも・・・、
それでも、 愛する人を【人殺し】になんてできない。
たとえ、 【運命】を変えることができないとしても・・・。
| 2004年08月20日(金) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第12話 【運命】の開示�� |
第12話 【運命】の開示��
深い海の底へ 私は落ちていった。
そこには何もない。
純粋な黒色が広がっているだけ。
押し寄せる波 鼓膜に届く潮騒。
寄せては返す一定のリズムに、 私はただ身を任せた。
【春子】でもない、 【運命を知るための契約】でもない。
金を取るため、欲望を満たすための【行為】ではなかった。
初めて、私は私利私欲以外で、 男性に抱かれた。
私の人生の中で、 一番幸せな瞬間だった。
その暗闇は、果てしなく深い。 吸い込まれるように もう二度と這い上がれないぐらい 私の意識は落ちていった。
このまま死んでしまうんじゃないかと 思った瞬間、 遠くの方に一筋の光が見えた。
その光は、 猛スピードで私に向かってくる。
よけたくても、 体が言うこと聞かない。
『・・・ぶつかる!?』
光は私の心臓の辺りをを突き破り、 背中を抜け、 また遠くの方へ消えていった。
ぶつかった瞬間、 私の眼球の裏側にたくさんの情景が映し出された。
映画を早送りで見ているような感覚。
『これが・・・、彼の【運命】・・・!?』
深い海の底から、 一気に現実の世界へ引き戻された。
目の前には、彼がいる。
そして、 目の前にいるこの人間が、 これからどうなっていくかを知ってしまった。
変えることが出来ない【運命】・・・。
感情の渦に飲み込まれ、 吐き気にいた感覚で、 涙として溢れ出た。
嬉しくて泣いているのか・・・、 悲しくて泣いているのか・・・、
そのどちらなのか、 私にも理解できない。
彼の顔が、 彼の優しい表情が、 涙で歪んで見える。
私は彼の口唇にキスをして、 耳元でささやいた。
『その優しい笑顔で、あなたは私を殺すんだね』
| 2004年08月19日(木) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第11話 【運命】の開示�� |
第11話 【運命】の開示��
秘書の男に対する私の気持ちは、 日増しに大きくなっていった。
それと同時に、 中年の男性との【行為】は、 とてもつらかった。
でも、中年の男性と寝るという契約があるからこそ、 その送り迎えで あの人と二人っきりになれる。
【好きな人と以外、寝られなくなった】 なんて、 中途半端なプライドをかざす資格、 私にはない。
好きな人との時間が少しでも欲しいから、 好きな人の笑顔を見たいから、 私は好きではない人と、寝なきゃいけない。
それでも、 他の男と寝たあとで、 彼に会わなきゃいけないことは、 頭で理解していても、 やっぱりつらかった・・・。
『そろそろ帰りますか?』
いつもの【仕事】が終わって、 中年の男性が部屋から出て行くと、 間もなくして、彼が入ってきた。
いつものように、 形式的な言葉だった。
彼が、 私を【女性】としてではなく、 【業務に関わる事項】としてしか見ていない事は知っている。
それでも、
それでも、私が生まれて初めて好きになった男性。
『一度で良いから私と寝てください。』
当然、彼は断った。
彼は今、業務を行っている最中であり、 私を家に送り帰すまでは、 決して間違いがあってはいけない。
何があっても、 彼は、忠実にあの中年の男性の指示を遂行する。
でも、 そんな人だからこそ、 そしてその身体の中に、 優しい気持ちがあるからこそ、 私は彼のことを好きになった。
私は彼の胸にしがみつき、 正直な気持ちを伝えた。
彼のことが好きだということ。
二人の時間が、 どれだけ自分の支えになっているかということ。
彼のことが好きだからこそ 契約をやめるわけにはいかないこと。
そして、他の男性に抱かれたあと、 彼に会わなきゃいけない苦しみ・・・。
泣きながら、彼に伝えた・・・。
彼は、私の涙を拭き取ると、 少し悲しそうに笑った。
そして、私をベットに導いた。
私は目を閉じ、 深い、暗闇の中に落ちていった。
どこか懐かしく、優しい暗闇に。
| 2004年08月18日(水) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第10話 至福 |
第10話 至福
あの日以来、 彼のことを少し違った視点で見ている私がいた。
【嫌いなタイプ】という視点でしか 見てなかった私が、 スープ一つで変わったことに、 我ながら安い女と笑ってしまう。
それでも、あの時のスープは、 支えを失い、 粉々に砕ける寸前だった私の心には 十分すぎる優しさだった。
人間としての感情、情愛のようなものを、 全てなくし、 ただの人形になってしまうところを あのスープに、 というより彼自身に助けられたのだ。
次の【仕事】のとき、 車の中で、 『スープありがとう』と言った。
彼は、 『はい。』と一言だけ言った。
その瞬間、また彼は スープをくれたときと同じように目を細めた。
それから、ほんの少しずつ、 彼との会話は増えていった。
数カ月経ち、 いつしか私は、 彼の送迎を楽しむようになっていた。
往復約15分の時間は、 今の私にとって何よりの楽しみだった。
私を送迎することも、 彼にとっては仕事の一つであるため、 心を許して会話するようなことはない。
それでも、 その会話の内容で、 ほんの少し彼の表情に喜怒哀楽が見える。
私が楽しかった話をすれば、 目を細め、一緒に喜んでくれる。
私が悲しかった話をすれば、 切ない表情で、一緒に悲しんでくれる。
ほんの一瞬でも、 彼は私の感情を共有してくれる。
今まで、私のまわりに 他人の喜び、悲しみを 自分のことのように感じ取ってくれる人はいなかった。
たったこれだけのことでも、 私にとってこんなにも幸せなことだと 初めて彼に教わった。
たぶん・・・彼が好き。
恋愛感情とはちがう。 恋人になりたいとか そういうことじゃなくて、 ただ単に、 一緒にいる時間が 私にとって、この上なく大切なものであるということ。
私を愛して欲しいわけでもない。
そんな図々しい事じゃなくて、
【仕事】をするときの あの送り迎えの時間が、 少しでも長くなってほしい・・・、 その程度のこと。
私のような人間にも、 それを望むことくらい許して欲しい
初めて、 私は私の【運命】に対して多くを求め始めていた。
いつかは中年の男性との契約は終了し、 彼との二人だけの時間はなくなってしまう。
それは5年先かもしれないし、 3ヶ月先、 明日のことかもしれない。
そんなのイヤ。
私なんて、どうせ いつどこで死んでもおかしくない人間だとは思う。
いままでなら そういう【運命】でもしょうがないと思っていた。
でも今は・・・、
でも今は、少しでも彼と一緒にいたい。
少しでも多く、彼のあの笑顔を見ていたい・・・。
【運命】は変えることが出来ない。 だからこそ、 その【運命】の訪れを、私は恐れていた。
それでも、 私の【運命】は、 少しずつ近づいてきていた。
他人の【運命】を知ることができても、 自分の【運命】は知ることが出来ない私は、 思わぬ形で、 私の【運命】を知ることになる。
私にとって、とても幸せで悲しい【運命】。
| 2004年08月17日(火) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第9話 ハミガキの必要性 |
第9話 ハミガキの必要性
中年の男性は、 いつものように私の上で果てた。
前戯の時間は数十秒、 私の中にいる時間も 『who missed whom』並みに短い。
満足することが目的ではない中年の男性にとって、 この行為は【ハミガキ】程度のものでしかなく、 もし、【虫歯にならない】という前提であるなら、 ハミガキする必要がないのと同じことだろう。
【行為】が終わると、 シャワーもろくに浴びないで部屋から出ていく。
【体に匂いがつく】という理由で、 この時は香水・強い匂いの化粧品は 使わないように言われている。
今日も、終始目を合わさずに【行為】は終わり、 10分もしないうちに いつものように部屋から出ていった。
私も、適当にシャワーを浴びて、 秘書の男に家まで送られる。
彼が中年の男性を送らずに、 私を送るのは、 ホテルから家までの間、 スクープをねらって嗅ぎ回るマスコミから うまく逃げるためだ。
私は、シャワーを浴びようと 体を起こした。
目の前には、 このホテルで 一番高いスウィートルールの部屋の風景。
今日は、一段と広く感じる。
私以外誰もいない部屋。
ゴミ一つ落ちてない、 絨毯にも、カーテンにも汚れ一つない。
その代わり、人の優しささえも感じられない。
静まりかえった空間が私の空しさを煽る。
寂しい・・・。
『えっ・・・?』 涙がこぼれた。
自分で理解できない領域の感情が、 私に涙を流させた。 理解できない領域だからこそ、 この涙を抑えることが出来なかった。
抑えようと働きかける力もなかった。
なんで自分が泣いているかわからないから 自分が泣いていることを受け入れられなかった。
仲の良い友人が 泣きじゃくっているのを 優しく見守っているような気分で、
ただ呆然と、 涙がシーツに落ちてシミになっていくのを眺めていた。
そのとき、部屋の扉が開き、 秘書の男が入ってきた。
泣いている私を見た彼は、 扉の前で立ち止まり、少し表情が動いた。
私は我に返り、涙を拭いた。 【泣きやまなきゃ】という指令が、 やっと自分の頭に伝わった。
泣いていることを隠そうと、 慌てて涙を拭いてる私を見て、 彼は、部屋にある電話を取った。 フロントになにやら電話しているようだ。
5分後。
部屋のチャイムが鳴り、 彼は扉を開け、ホテルの従業員から何かを受け取った。
彼はおもむろに私に近づくと、 『スープを作ってもらった。 ここのスープは美味しいよ。』
と言って、ベットの横に置いた。
彼から話しかけてきたのは、 初めて会ったとき以来だった。
そのとき彼は、目を細め、 優しく、穏やかな笑顔を浮かべた。
今日まで社交辞令的な笑顔しか見せなかった彼が、 たった一瞬だけではあったが、 初めて感情のある表情を見せた。
気のせいかと思うぐらい、ほんの一瞬だったけど。
彼が持ってきてくれたスープは、 温かくて美味しくて、心がとても落ち着いた。
注)【who missed whom】(邦題『すれちがい』) ・Charlotte Wailor監督によるフランス映画。 ・上映時間6分のショートフィルム
| 2004年08月16日(月) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第8話 ゆとり |
第8話 ゆとり
月1〜2回の【仕事】は、 あの1年前のホテルで行われる。
【出勤】するときは 毎回、あの秘書と思われる男が迎えに来る。
車の中で彼と話すことはほとんどなかった。
彼から話しかけてくることはないし、 何か聞いても、 当たり障りのない答えしか返ってこないため、 私はいつの間にか 彼に話しかけることをあきらめていた。
初めて会ったときの、 【嫌いなタイプ】という予想は当たっていた。
中年の男性の政治家としての活躍は順調だった。
そもそも自分の政治家生命を縮めるような事を 自らするような人ではない。
お酒を飲む量も少なく、 愛人がいるわけでもない。
案の定、 私が見えた【運命】も、 差し障りのないものであり、 あと数年は、 政治家として順風満帆の日々を送れそうだった。
中年の男性の政治家としての日々が順調だったからこそ、 今の私の静かな生活が保障されているわけで、 その辺は感謝しなければいけない。
それでも・・・、
それでも、この暮らしに、 どこか空しさを感じるのはなんでだろう。
以前のような、 行き当たりばったりの生活に 戻りたいわけではない。
【刺激】のない生活と 今の生活に不満があるわけでもない。
じゃあ、 この【空しさ】は、 私のどの部分から生まれているのか。
中年の男性と契約し、 静かな生活になったからこそ、 今までの自分を振り返る【ゆとり】が出来た。
自分の体を犠牲にして生きてることを、 【春子】と言う言葉で曖昧にして、 自分自身、 勝手に肯定していただけではないのか。
【不特定多数の男性に売る】のと、 【中年の男性に売る】のと、 一体、どんな違いがあるというのか。
【春子】という言葉と、 【売春】という言葉に、 一体、どんな違いがあるというのか。
そこに【違い】なんてなかった。
私はこれからも、 この生活を続けるだろう。
ちっぽけなで、安っぽい自我に目覚めて、 今さら【春子】をやめるような、 私はそんな偉そうなことを言える立場の人間ではない。
中年の男性と契約し、 今の暮らしがあるだけでも、 私の【能力】に感謝しなきゃいけない。
それがきっと・・・
変えることのできない 私の【運命】なのだから・・・。
| 2004年08月15日(日) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第7話 1年後 |
第7話 1年後
あのホテルに行ったときから 1年の月日が経った。
あの日以来、 私は【春子】をしていない。
住むところも変わり、 遊んでた友達とは連絡をとっていない。
本籍も名前も変わってはいないが、 気分的には全く別の人間として 生活している。
それが・・・、契約の内容だった。
1年前の、あの15分間。
中年の男性は、淡々と話し始めた。
私はこれまで何事もなく 政治家としてやってこれた。 もちろん、これからも この世界に携わって行くつもりだ。
ただし今までのように 危機的状況に対して 【現金】を積んで 解決するようなやり方は、 これから通用しない。
【現金】に変わるもの。 それが【情報】だよ。
それも量だけあって、 不確かなものはいらない。
寸分狂いのない 【正確な情報】が1つあればいい。
どんなに政治家生命を奪うような危機的状況に 陥ったとしても、 それを事前に知るか知らないで大きな差が出る。
なおかつ、それが 【事前に知っていた危機的状況】であるなら、 それはすでに【危機的状況】ではなくなっているんだよ。
そこで君の出番となる。
春子・・・と言ったか? 要するに、 不特定多数に対する【売り買い】をやめて 私の専属として、働いて欲しい。
そして君の見えた【私の運命】を その都度、伝えてくれればいい。
報酬の方は、 君が生活する上で、十分な額を支払おう。
私の目的は【正確な情報】を得ることであって、 性的なものではない。
とりあえず月に1〜2回、その行為をするだけで、 君は何不自由のない生活をすることが出来る。
決して悪い話ではないはずだ。
まあ、あくまで口約束であり、 正式に文面で契約するわけではないが、 故意に、違った情報を言った場合などは、 それなりに覚悟してくれないと困るよ。
私は【人殺しは嫌いだ】とは言ったが、 【人殺しをしない】とは言ってない。
【必要な状況】においてはやむを得ないからね。
私は、契約を交わした。
あの時、 私にこの契約をを断る権利があったかわからない。
でも今となっては、 この生活も悪くないと思っている。
占い感覚で【運命】を知りたいがために レイプされそうになるよりは、 月に1〜2回程度、 あの中年の男性を相手にしている方が、 よっぽど楽な生活だ。
この生活は、 これから先、どうなっていくのだろう。
好きな服が買えて、 美味しいものを食べて、 前のアパートとは、 比べものにならないくらい広い部屋に住んでいる。
生きるだけで精一杯だった前の生活とは、 全く別世界、別次元だ。
私のまわりだけ 時間が止まっているような、 空気の流れるスピードを遅く感じる。
着心地の悪い洋服着せられ、 好き勝手に連れ回されている犬の気持ちは、 多分、こんなものなのだろう。
そのうち、世話することも出来なくなって 捨てられることがわかっているだけでも、 犬よりマシな方か。
これも、私の【運命】の一つ。
この先、どれくらいこの生活が続くのか、 そしてその後にどんな【運命】が待っているのか、
静かにその時を待つしかない。
今さらどうあがいても、 【運命】は変えられないのだから。
| 2004年08月14日(土) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第6話 シャンパンの味 |
第6話 シャンパンの味
車から降り、 地下の駐車場からロビーを通ることなく、 エレベーターでそのまま17階の部屋に案内された。
このホテルに私がいることが、 誰も知らない状況となったわけだ。
『この部屋です。』
中に入り、まわりを見渡すと そこには誰もいなかった。
『誰もいないじゃん』
『待つのがお嫌いな方でして。 もうすぐいらっしゃいます。 おかけになってお待ち下さい。 何か飲み物お持ちしますか?』
『いらない。』
『かしこまりました。』
男はそう言うと、部屋から出ていった。
部屋から望む夜景は、とてもきれいだった。 それより、 自分が今、夜景に感動する余裕があることに驚いた。
余裕と言うより開き直りに近いのかも知れない。
『どうせなら超高いシャンパンでも頼んでおくんだった。 殺される前にもう一回頼んでみようっと』
その時ドアが開き、 さっきの男と、 もう一人、中年の男性が入ってきた。
『私は人殺しは嫌いだ。』
そう言うと、 中年の男性はそのままソファに座った。
『君も掛けたまえ。』
その人物に驚いた私は、 頷くことも出来ずに、 言われるままに その中年男性の正面に座った。
テレビで見たことがある。 名前は出てこないけど・・・。
多分・・・、代議士。
ってことは、あの男は政治家の秘書・・・。
『シャンパンが飲みたいのか。 なあ、用意してあげなさい。』
そう言うと男は冷蔵庫から 黒々しい瓶を取り出し、グラスに注いだ。
グラスを私の前に差し出すと 一礼し、そのまま部屋から出ていった。
一呼吸を置き、 中年男性は、話し始めた。 『私も忙しい身だ。要点から言おう。』
それから15分ぐらい、中年の男性は話し続けた。
間違いなく、私自身に話しかけているのに、 違う人に話しかけてるのを 私がまわりから眺めているような、 自分のことじゃないような感覚だった。
話が終わると、 私はまたあの黒塗りの車に乗せられ、 家まで送られた。
自分の魂が幽体離脱から戻ってきたのは、 部屋でトイレの便座に座ったときだ。
トイレで用を済ませ、 手を洗い、タオルでふき取ったとき、 やっと頭の中で整理が出来た。
『荷物の整理しなきゃ』
一息で吹き消すことのできるマッチの火のような 私の【運命】は、 吹き消されるどころか、 そもそも火を付ける自由でさえ、 奪われてしまった。
シャンパンの味なんてわからなかった。
舌がビリビリするだけで、 メロン味かも、イチゴ味かもわからなかった。
| 2004年08月13日(金) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第5話 黒塗りの車の男 |
第5話 黒塗りの車の男
『貴方の能力について、【ある方】がお会いしたいと申しております。 ご足労ですが、少し時間をいただけないでしょうか?』
黒塗りの車で現れた男は、丁寧な口調で私に話しかけてきた。
その男は 今まで感じたことのない、 独特の雰囲気を醸し出していた。
生理的に受け付けないというか、 本能的に危機感を感じるような、 ハッキリ言って嫌いなタイプ。
感情が表情に出ないタイプ。 一見、おとなしそうで悪い人には見えないけど、 こういう人は 何を考えてるかわからないから 一番たちが悪い。
出来ることなら、その車に乗りたくはなかった。
警察に捕まるわけではなさそうだけど、 それよりもっと、 二度と戻って来れなそうな、 何か得体の知れない恐怖感を感じた。
『断ることができるの?』
という私の問いに、 その男は少し笑いながら横に首を振った。
『ご両親が危篤な場合以外は、 連れてくるように申し使っております。』
『おじいちゃんが死にかけてるんだけど』
『貴方の御祖父に関しては、 お母様の方は亡くなっておられますし、 お父様の方は10年以上連絡を取っておられないと思いますが?』
『いろいろ知ってるんだ?』
『失礼かと存じますが、これも仕事でして。』
『ふ〜ん』
『ちなみにお父様の方の御祖父は、今も元気でおられますよ。』
乗らないわけにはいかなかいようだ。
不安な気持ちを抱えながらも、 結局、車の後部座席に乗り込んだ。
乗り心地の良さが、余計に不安な気持ちを煽った。
どこに連れて行くのか、 誰が待っているのか、 何を聞いても、その男は 『着けばわかります』しか言わない。
20分後、車は高級ホテルの地下駐車場へと 入っていった。
車が地下に降りるとき、 入り口の前に立っていたホテルの従業員が、 男に対して一礼した。
それも、見知らぬ客に対してのものではなく、 明らかに顔なじみに対する一礼であった。
この男が、 というよりこの男の雇い主が、 どれだけこの高級ホテルのなじみ客かどうかが よくわかった。
他人の【運命】が見える私だからこそ、 【わからない自分の運命】は、 きっと軽くて安っぽいものであると予想していた。
マッチの火を 一息で吹き消すような、 そんな他人の力でどうともなるような チープなものなんだろう・・・と。
でも、それは意外な形で 私の前に現れることとなる。
今さらどうすることも出来ない。
私自身の運命だって、決して変えられないのだから。
| 2004年08月12日(木) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第4話 鏡 |
第4話 鏡
【春子】という行為をする人間というのは、 やっぱり普通とはズレた道を歩いていることが多く、 多かれ少なかれ、その代償があとあと降りかかるもの。
春子が終わって見えてくる運命は、 呆れてしまうくらい情けないものばかり。
このオヤジならしょうがないと思えば、 春子がバレて捕まることも、 会社をクビになるってことでも 教えるつもりはなかった。
生理的に受け付けない人間が この先不幸になろうとも、 ハッキリ言ってどうでもいい
ただ、春子のような商売? そういう行為はほとんどが、 初対面で、そしてもう二度と会わない人と行われる。
そんな薄っぺらい関係でも、気のあった人、 好感触をもってしまう人もいたりする。
そんな人たちの運命を知るのは 自分の中では楽しみの一つであり、 悲しい運命を背負う人には同情してしまう。
だから、その悲しみを少しでも減らせるように アドバイスをしてしまう。
結局は、噂は広まってしまった。 【運命が見える売春婦】 そんなセンスのない名前を付けられ、 客の数は増えていった。
ただし、その目的で買いに来る人間は、 なるべくなら避けたかった。
悪い運命を告げれば、 気に入らないと暴力を振るう人間もいるからだ。
その悪い運命が的中したら、 それはそれで私を逆恨みする人間もいる。
まあ、断れば断ったで、 下等生物の私たちが客を選ぶなんて 気に入らないらしく、結局は暴力を振るわれた。
中には、なにがなんでも運命を知りたいと、 レイプをしてくる人間もいる。
どうせそういうオヤジ達は寝なくたって、 ろくでもない運命を辿ることは目に見えているけど。
運命は、 隔世遺伝のように突然訪れるものではない。
不慮の事故ではしょうがないけど、 だいたいは、自分の普段の生活が 巡り巡って結果に繋がる。
私たちを 自分の欲望のはけ口として、 下等生物としてしか見てない人間が、 まっとうな運命を辿れるわけがない。
人をねたみ、 憎み、 蔑んできた人間は、 それと同様に 自分も憎まれ、 恨みを買い、 いつしか【運命】として訪れる。
【運命】は自分を映し出す鏡のようなものだから。
| 2004年08月11日(水) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第3話 義務 |
第3話 義務
有名になるのはイヤだった。
たとえ他の人にはない能力を持っていたとしても、 そのためには寝なきゃいけないし、 結局は【春子】してるわけだし。
あんまり大騒ぎされると 私が捕まってしまう。
とはいえ、
その人の一生に関わることが見えてしまうと、 人としてやっぱり教えない訳にはいかない。
その辺は【この力】を持った私の義務だと思う。
その代わり、良いことは教えないで、 悪いこと、特に一生を左右しかねない事しか 教えないようにしている。
っていうか、 一言で【運命】って言っても、 それがその人の一生の中で、どの部分の事を指すのか 難しいと思う。
人はみんな必ず死んでしまうし、 であれば、死ぬことだって 広義での【運命】であることは間違いない。
その中で私が見ることの出来る運命は、 その人にとって【運命】であっても、 一生の中でどの程度影響する【運命】なのかは 私にはわからない。
事故によって植物人間になってしまうとしても、 会社が倒産して、路頭に迷うことになっても、 その人のもっと先にある【運命】によって 結果的に幸せになることだってあり得る。
でも私が見えるその【事柄】は、 【運命】であることは間違いない
予言のように外れることがないし、 未来とか将来と言ったような 【希望をを含んだもの】ではないのだから。
どんなにその人が回避しようにも 回避することが出来ない、変えることができない【運命】
| 2004年08月10日(火) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第2話 春子(ハルコ) |
第2話 春子(ハルコ)
私の名前ではない。
っていうか、私たちの間では人を表す言葉じゃない。
【体を売ること】。それが【春子(ハルコ)】。
特に意味はないんだけど、 【売春】とか【援助交際】って言葉が嫌いだから、 【売春】の【春】をとって付けただけ。
あとは・・・、高校の時、同じクラスに【春子】って むかつく優等生がいたから。
【特別な力】ってのは、 私と寝た男の【運命】が見えること。
しかも、その特技に気づいてから今日まで、 その【運命】が外れたことがない。
ただ、予言って言うほど高貴なものじゃないし、 みんなに知れ渡って 下手に騒がれると正直迷惑。
私のこの話を 『ハリーポッター』みたいに壮大なものにしたくないし。
どうでもいいけど、あの映画、 みんなが言うほど面白くもないよね?
私が見えるその人の運命は、 私の眼球の裏側に映画のスクリーンのように映し出される。
【命が危険にさらされると、 今までの思い出が走馬燈のように流れる】 って言うけど、 感覚的にはあんな感じだと思う。
さっき、この特技に気づいてから今日まで外したことないって 言ったけど、それは本当で、 事故によってケガするとか、 仕事が成功して大金持ちになるとか、 その具体的な要因はさすがに言い切れないけど、 結果に関しては、外したことがない。
逆に言えば、逆らうことだって出来ない。 【借金を背負う姿】が見えてしまえば、 何らかの形でその人は、必ず借金を背負うことになる。
だから、もし【ケガをする姿】が見えたときは、 【ケガをしないように気を付けること】 をアドバイスするんじゃなくて、 あらかじめ保険をかけておくとかみたいに、 【ケガをしても良いように準備すること】とアドバイスしてる。
結局・・・、運命は変えられないから・・・。
| 2004年08月09日(月) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第1話 定義 |
【運命は変えられる】って言うけど、 多分、それは違う。
もし仮に、現状がイヤで、 それを変えるために頑張って、運良く打開したとしても、 【頑張って打開したその状況】が結果的にその人の運命なわけだから、 結局、運命は変えられないんだよ。
人の手によって変えることが出来るのは、2つだけ・・・。
・・・生と死。
中出しするかゴム付けるかは、その人のサジ加減。 銃口を口にくわえて引き金引くかも、その人のサジ加減。
ほら、 やっぱり変えられるのは、生と死だけなんだよ・・・。
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】
第1話 定義
【売春】って言葉、嫌い。
具体的に口に出せないから、 便宜上、包括的に表現してるのだろうけど、 【春を売る】だなんて、 インテリ気取りの勘違いしてるオヤジが考えそうな言葉。 寒気がする。
【援助交際】って言葉も嫌い。
【援助】ってことは、 お金もらってる私たちがバカオヤジに助けてもらってることになっちゃう。
こっちはオヤジのスケベ心を満たしてあげてるわけだし、 売る側と買う側ってのは対等のはず。
別に、【体を売ること】を肯定するつもりはない。 いけないことだと思うし、 売らなくて済むならそっちの方がいい。
私だって、出来ることなら普通の生活を送りたい。
高校行って、大学行って、就職して、 好きな人と結婚して、その人の子ども産んで、 子どもが独立して、孫が産まれて、 旦那が死ぬのを看取ってから、 家族に囲まれて、一生を終える・・・
そんな【慎ましやかな中流家庭】を築けるなら それに越したことはない。
でも、バカな父親とバカな母親のせいで それが出来ないから 体を売ってまで生きているわけ。
私が今まで歩んできた道のり、環境、 それらはそんなに重要な事じゃない。
借金?近親相姦?自己破産?・・・etc その辺は勝手に想像して欲しいと思う。
ここでのお話は、 私のある【特別な力】についてです。
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