こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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| 2007年11月20日(火) |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第10話『大学生が殺された日その��』 |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第10話『大学生が殺された日その��』
『毎日練習あるとなかなかね・・・。』
あるとき 彼が私に弱音を吐いたのがきっかけだった。
彼は大学で野球部に所属していた。 ただ、特待生として入学していない彼は、 遠征費やその他用具の費用を自己負担しなければならない。
ご両親からの仕送りだけでは間に合わず、 とはいえ夜遅くまで練習するのでバイトするヒマもない。
『これ、少しだけど足しにして』
最初は驚き、受け取ろうとしなかったが 最後は私の押しに負けて受け取ってくれた。
その日を境に、 私は定期的に彼に援助していく。
これといった趣味もなく、 学生時代の友人とも いまとなっては1人か2人ぐらいしか 付き合いのない私にとって、 自分自身へのお金の使い道はほとんどなく、 へそくりという名目で ただただ貯め込んでいるだけ。
そんな面白みのない私より 彼に役立てた方がよっほど有意義だと思う。
夫の稼いでくるお金で 何不自由なく、 なあなあに生きている私より 一生懸命野球に情熱を注いでいる彼の方が よっぽどこのお金に値する人生を送っているように思えた。
ときどき彼のアパートで料理を作ったり、 彼の誕生日には 欲しいと言っていた金属製のバットを買ってあげ、 遠征に行くときは、その旅費を援助した。
私は彼に出来るだけのことをした。
彼の役に立っている。 彼が私を必要としてくれる。 彼が私に笑顔を見せてくれる。
私はそれだけで幸せな気持ちになれた。
何も見返りを求めず、 ただ野球に専念してくれればいい。
それだけでよかった。
これが一生続かないことなど 私にだってわかっていた。 一生続かないにしろ、 本当に彼の役に立っているのなら、 私はそれでも良かった。
けれども彼は私を騙していた。 最初から私を騙すつもりで近づいていた。
役に立っていたには違いはない。 ただそれは 彼が遊ぶ目的のお金として役立っていただけ。
彼の野球への情熱が本当であれば、 きっと何も起こらなかった
きっと彼は死なずに済んだ。
きっと私は犯罪者にならずに済んだ。
そう。
彼の野球への情熱が本当であれば、 私が買ってあげた金属製のバットは 彼を殺すための凶器にはならなかった・・・。
| 2007年11月19日(月) |
(劇場休憩)ハウクリ |
(劇場休憩)ハウクリ
昨日ハウクリをした。
正式にはハウスクリーニング。 略した意味は特にない。
24日から結婚相手との同居が始まるが、 いい新居が見つからなかったため、 いま私が住んでいるアパートにとりあえず住むこととなった。
使ったモノは元の場所に返すが信条の私は 一般の男性にしてはきれい好きで 男の一人暮らしにしてはきれいな方だと思う。
みりんを常備し サバの味噌煮を本も見ずに作ってしまい、 フライパンにこびり付けることなく、 ツバキシャンプーのCMに出てくる女性なみの サラサラ炒飯を作ってしまう私は その辺の独身女性よりはるかに料理上手と言えるだろう。
そんなIKKOやピーター並みに 良いお嫁さんになれそうな私だが・・・、 (IKKOもピーターもおっさんだ・・・。)
やはり5年もいまのアパートにいれば 換気扇だのレンジまわりだの風呂場は 日々の掃除ではどうしても行き届かないところがある。
つーことでハウクリ。
まぁまぁいい金額はふんだくられたが、 良い意味で【仕切直し】にはなったかと思う。
24日より引渡をうける嫁だって その方がいいだろう。
ん?24日? あと4日後かい!?
仕事もバタバタし、 そのうえ式やら新婚旅行やらの準備で気にもしなかったが、 俺の【実質的な独身ライフ】はあと4夜しかないのね・・・。
べつに独身でなくなるのが寂しい訳ではない。
当然その辺も含めて決意してるわけだし 早く愛娘作ってイタズラしたいぐらいだ。
とりあえず意外にも残りわずかでびっくりしたわけです。
右手の出動回数減るんだろうなあ
移籍金つぎ込んで大型FWも獲得できなくなるなぁ (ウィニングイレブンの話です。)
明日燃えるゴミの日だし 【必要がなくなる本】捨てなきゃね
| 2007年11月15日(木) |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第9話『大学生が殺された日その�◆� |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第9話『大学生が殺された日その�◆�
○○さんですよね?
待ち合わせ場所で私に声をかけてきた男性は どこにでもいる普通の大学生だった。
正直ホントに来てくれると思ってなかったんでうれしいっす
髪は短めで 顔は少し日焼けしていて いかにもいまどきの大学生だったけど 体は服の上からでもわかるほど引き締まっていた
『はじめまして・・・よろしくお願いします』
よろしくお願いしますって そんな緊張しないでくださいよ こっちまで緊張するし
『えぇ・・・すいません。 こういうの初めてでどうしていいのか』
こちらこそよろしくお願いしますね べつに悪いことしてるわけじゃないんだし 普通に楽しみましょうよ
とりあえず飯でも行きません? 俺、朝からなんも食ってないんで
こうして私たちは出会い、 そしてその日のうちに関係を持ってしまう。
世間で言うところの【不倫】であり 出会ったきっかけが ケータイの【出会い系サイト】であることで 最初は夫や家族への罪悪感にさいなまれる。
そもそもケータイの【出会い系サイト】を利用する人なんて 一般人とはまったく別の汚らわしい人種をイメージしていた。
ただ私の前に現れた人はどこにでもいる普通の大学生。 見た目どころか、考え方も行動もまったく普通の大学生。
退屈なほど自由な時間があり、 社会に対して責任がなく、 有り余るほどのエネルギーを持ち合わせている。
主婦である私がこれまで失ってきたもの、 【若さ】という言葉に要約される全てを彼は持っていた。
そして、そんな彼と一緒にいるだけで、 私は失ったものを取り戻した気持ちになれた。
私の中で、【罪悪感】が【罪悪感】ではなくなり、 緊張感から生じる【冒険心】と変わっていく。
年下の男性が持つ可愛らしさは みごとに私の母性本能を刺激し、 彼のわがままに困りつつも、 それに応えていくことに私は幸せを感じてしまう。
彼の求めるもの・・・ それが体であってもモノであってもお金であっても 私の出来る精一杯のものを与え続けた。
求めるものは次第に大きくなっていて 気づかぬうちに私は深い沼の底へと落ちていった。
口の中に泥水が入り込んで はじめて自分が溺れていることに気づき はい上がろうとする頃には 掴めるところはなくなっていて もがき苦しみながら 自分の過ちを悔やみながら沈んでいく
深い沼の底にあるもの まっ黒な闇の中にあるもの
それが、私が人を殺したという事実。
| 2007年11月07日(水) |
(事務連絡)吉田サスペンス劇場【夏美】 |
わたくしすっかり勘違いしておりました。
自殺した主婦の設定を35才に変更です。
誠に申し訳ございません。
吉田理恵
| 2007年11月04日(日) |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第8話『大学生が殺された日その� � |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第8話『大学生が殺された日その� �
それはもちろん悪い夢なんかではなく 決して逃れられない現実だった
今日私は人を殺した。
ふと気づけば 彼の後頭部から流れ出した血は私の足元まで広がっていた。 私にはその血液が津波が迫っているように見え 逃げようとしても体が言うことを聞かず 2、3歩たじろぐだけだった。
手にはまだあの鈍い感触が残っていた。 彼に言われた一言に逆上し 思わずそばにあったバットを手に取り、彼の頭に振り下ろした。 私に背を向け ケラケラと品のない声で笑っていた彼はそのまま横に倒れ、 スリッパで叩かれたゴキブリのように少しの間体をヒクヒクとさせたが、 時期に動かなくなった。
『逃げて。この部屋にある私の指紋をすべて拭き取って逃げるの。 私と彼をつなげるものはないの。 逃げればきっと誰にもバレずに済むから』
動揺する私に冷静な私が逃げろと言う。
下着のままだった私は自分の服を着て、 凶器となったバットはもちろん、 自分が触った家のモノから指紋を拭き取り、 布団の上やベッドのまわりにある自分の髪の毛を拾い ティッシュにくるんだ。
最初は動揺していたが髪の毛を拾っている頃には 思った以上に落ち着いている自分がいた。
『大丈夫。私と彼の関係がわかる訳ない。』
自分にそう言い聞かし、 洗面台の鏡でボサボサな髪をクシでとかした。
最後に、彼がゴミ箱に捨てたコンドームを取り出し、 またティッシュにくるんで、 髪の毛をくるんだティッシュとともにバッグに入れた。
私は玄関の扉を開け、外に誰もいないことを確認すると、 彼の部屋から出てエレベーターを使わずに階段で一階まで降りた。
そして平静を装いつつ足早に駅へ向かって歩き出した。
ホームで5分待ち、 到着した電車に乗り込むと30分程度でいつもの駅に着いた。
駅前にあるいつものスーパーで買い物し、 いつもの道を通って自宅へと向かう。 途中バッグから丸められたティッシュを取り出し コンビニの自動ドアの横にあるゴミ箱に放り投げた。
自宅に到着し玄関を開けたとき、子供が私に笑顔で駆け寄る。 『ママ、おかえり』
その屈託のない笑顔を見たとき暖かい安堵感に包まれ、 今日私が背負った大きな罪が少し軽くなった気がした。
きっとバレやしない。 いいえ。この子のためにもバレるわけにはいかない。 きっとあれは悪い夢。私はいつもの生活に戻ったの。
そう言い聞かし、子供と戯れながら、買い物した荷物を片手に台所へ向かった。
でもそれはもちろん悪い夢なんかではなく 決して逃れられない現実。
今日私が人殺しとなった現実。
| 2007年11月01日(木) |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第7話『しなやかな景色』 |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第7話『しなやかな景色』
太陽から降り注ぐ光は海を黄色く染めようとする。波はしなやかな動きで黄色を飲み込み、また深い青を取り戻そうとする。繰り返される海と太陽の駆け引きは私の中に渦巻く収拾のつかない感情をほんの少しでも和らげてくれる気がした。憎悪、恐怖、絶望、悲嘆、後悔、憎悪、恐怖、絶望、悲嘆、後悔、憎悪、恐怖、絶望、悲嘆、後悔。大きな渦の中でもがき苦しむ私を、目の前の景色は慰めているように思えた。もう十分苦しんだよね。こっちにおいでよ。そう言ってくれている気がした。シートは今ごろ真っ赤に染まってて、それを見た瞬間、きっと私は死ぬことをためらってしまう。臆病な私はきっと誰かに助けを求めてしまう。だから海を眺めていた。このしなやかな景色をぼんやりと見つめている。 カミソリの刃が皮膚を貫いたとき、筋肉の繊維一つ一つを切り裂いていくとき、そして体温より温かい液体が溢れ出したとき、私は不思議と痛みを感じなかった。痛みが生きていく上で必要不可欠なものであるとするなら、私はもう『人』であること、『生き物』であることを否定されたのかもしれない。仮に否定されていないとしても、私は【人間】として【してはいけないこと】をしてしまった。
一週間前、彼を殺していなければ
二ヶ月前、彼をこの車の助手席に乗せていなければ
三人目に、夏美さんが【あの部屋】に入ってこなければ…
この中の一つでも欠けていれば私は前と変わらない幸せな生活を送っていたのかもしれない。
もう時間は戻せない。
もう引き返すことは出来ない。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんな…
薄れていく意識の中で、 私は何度もこの言葉を繰り返した。
海と空の境目がわからなくなっていく
景色の中にあるたくさんの色が一つになっていく
死ぬとは色を失っていくことだと知ったとき
右手に握っていたカミソリが 小さな音をたて足元へと落ちた
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