Opportunity knocks
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「くせ」
夕食後自分の部屋でお茶を飲んでいるときだった。
「こんばんは先生」
とメガネザルが大きな目をくるくるさせながらわたしの部屋に入ってきた。 メガネザルはいつもこんな風に突然やってくるのだ。
「花鳥先生、このまえの約束の件ですが・・・」メガネザルは挨拶もせずいきなり切り出した。
「約束?ふむ、どんな約束だね、わたしはおまえと約束なぞした覚えはないが・・・」
「先生、忘れた振りなんかしたってむだですよ、あたしはちゃあんとおぼえているんですからね。それともそうやって忘れたふりして約束を反故にするおつもりじゃないでしょうね」
メガネザルは長い尻尾をぶんぶん振りまわしながら、いくぶん興奮気味に言った。
「なにをいってるんだね、メガネザル。わたしはちゃんと約束を守る人間だよ、ただおまえと何の約束をしていたかが思い出せないだけなんだ、教えておくれ、わたしはおまえと何の約束をしたのだったかな」
「しかたないな。先生、このまえ先生が新しい小説のアイデアが思い浮かばなくて頭を抱えてたとき、わたしがあるアイデアをだしてあげたじゃないですか。で、そのアイデアが小説になったらおまえの望むものをやろう、と先生はそうおっしゃったんですよ。」
思い出した。そうだ、いくら考えても新しい小説の構想が浮かばないのでつい、偶然いあわせたメガネザルにそんなことをいってしまったのだった。 メガネザルが出したアイデアはそのときは鼻で軽くあしらったのだが、わたしの担当者である編集者Sはそのアイデアに思いのほか乗り気で、とうとうそのアイデアが1冊の小説になってしまった。それがどういうわけか売れに売れて今年のベストセラーになったのだ。
「おもいだしたよメガネザル。おまえとの約束を。すまなかったね。」 「思い出していただけましたか。じゃあわたしが今日何をいただきにあがったかおわかりですね」
「・・・・・」
おまえの望むものをやろう、とわたしはあのとき確かにそういった。そしてメガネザルは、よりにもよってわたしが大切にしているたったひとりの娘を嫁にほしいとあつかましくも言ったのだった。
「お嬢さんをいただきます・・・」
メガネザルは耳の先っぽからお尻まで真っ赤になりながらそういった。
さて困った事になった。わたしはメガネザルとの約束など今の今まで忘れていたのだ。 当然わたしの大切な娘を嫁にやるなどということを本気で言ったわけでもない。 わたしは小説を書くことで頭がいっぱいだった。小説のためなら見境なくどんなことでも言ったりやったりするのがわたしの悪いくせなのだ。 わたしは考えた。どうすればメガネザルをうまく追い返す事ができるだろうか。
メガネザルは大きい目を充血させながらじっとわたしを見ている。 わたしはそっとためいきをついた。 長い夜になりそうだ。
夢をみた。 広くて明るくて白い壁にかこまれた家の中で、小さな娘と男の人と床に座って一緒に絵本を読んでいる夢。 娘はまだ2さいくらいで、言葉はあまり話さないけれど、絵本の中のいろんなものを指差ししてはわたしの話す言葉にじっと耳をすませたり頷いたりしている。男の人は白いシャツをきてめがねをかけていて、わたしが娘に読んできかせているのをそばできいている。
思い出そうとすればするほどもう細かいところはあいまいになってしまったけど、夢の中ではとても幸福な気持ちだった。足りないものなど何もなくて、しあわせで穏やかで。
現実生活はいろいろ切羽詰っていて、いつも焦っていて余裕が無いのに、なんでそんな夢をみたんだろう。
また夢の中にもどりたい、なんて考えている週のはじめの月曜日。
かなり伸びてきたのでトマトに支柱をたてる
このまえ撮った写真の花が実になったもの↓
まだまだ赤くならないけど少しずつふくらんでいく感じがとてもかわいい。
茄子の方は花はどんどん咲くのだけどなかなか実がふくらまない。 肥料をあげないとだめかな、やっぱり。
それでもみているだけで毎日たのしい。
のだけど。
頭がいたいのがアブラムシ。 こやつらはなんの存在理由があってこの世界に存在しているのだろう。 薬をまけばいなくなるのだろうけど、なるべくならそんなものはまきたくない。
ぐぐってみたらいいことが書いてあった。
アブラムシのやっつけかた
どうもこの虫ちゃんがにっくきアブラムシを駆除してくれるらしい。もぐもぐと。
うちのベランダで働いてくれませんか? と、近々スカウトしてこようと思う。
最近好きな原作が次々に映画になるようでうれしい。
夏にはガルシア・マルケスの「コレラの時代の愛」 秋にはジョゼ・サラマーゴの「白の闇」(ブラインドネス) 詳細は忘れたけど、ミルハウザーの小説も今年中に映画になるらしい。
「白の闇」は監督が「シティ・オブ・ゴッド」や「ナイロビの蜂」のフェルナンド・メイレレスでこれも期待大。 「コレラの時代の愛」の主人公の男にハビエル・バルデムというのもおもしろそうだし。
ちょっと先にたのしみなことがあるって、けっこう良いものです。
ベランダの野菜が花を咲かせた。
つぼみが徐々に膨らんでいったり、小さな新芽が少しずつ葉を広げていく様子は見ていてとてもたのしい。元気をもらう。
またもや更新が滞る。
無為に時間が過ぎていって、なおかつそのことについてくよくよ悩んだりする毎日。
嘆息。
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