日々雑感
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調べものがあって中央図書館へ行く。電車に乗って数駅。平日の午後だが人が多い。安部公房の『死に急ぐ鯨たち』があったので借りる。
帰りは歩く。図書館からうちの最寄り駅までは緑道がつづいている。細い道の両脇には木々が並び、春には桜が咲く。藪の中から猫が出てくることもある。この道は以前川が流れていたところを埋め立てたあとらしい。ゆるやかに蛇行しながらつづく道に、かつての川の姿を想う。
今日は風が強く、空気もなんだかぼやぼやしている。嵐がやってくる前みたいだ。葉っぱもたくさん舞っている。
いつもの銭湯へ行く。銭湯の隣には小さな豆腐屋があって、おじいさん、おばあさんの二人が切り盛りしている。日が暮れると白熱灯がともって、ぼんやりした光の中に豆腐やおから、がんもどき、厚揚げなどが浮かび、お客さんも集まってくる。昼間はあまり感じないのだが、夕方頃にこの店の前を通ると、いつもなつかしい感じがする。
「なつかしい」って何だろう。かつて知っていたもの、けれども今はここにないものに対する感情か。しかし、過去に一度も見聞きしたことのないものに対して「なつかしい」と感じることも確かにある。(「この曲は何かなつかしいかんじ」とか「なつかしい風景」とか)そのとき、そのものの後ろに私たちは何を見ているのだろう。いつかインプットされた記憶が刺激されているのだろうか。
辞書をひいたら「なつかしい」の語義として「心がひかれて手放したくない」というものがあった。(古語ではそれが一般的だったのか。そのあたりは勉強不足)「なつく」という動詞の形容詞化と聞いて何となく納得する。何かに対して親近感を抱くときにも「なつかしい」という言葉はあてはまるのだ。
今でも、何かを好もしくおもうときに無意識に「なつかしい」という言葉を使っているのかもしれない。そうした感情と過去や記憶とのつながりなど、気になる。
夕方から近所の図書館へ行く。そんなに長い時間いたわけではないのに、外へ出た頃にはもう暗くなっていた。最近は5時前には日が暮れる。明るい時間帯が短いと一日があっという間に終わってしまうような気がする。
借りたのはメアリー・ノートンの『床下の小人たち』『野に出た小人たち』(岩波書店)。小さい頃に読んだのだが、最近復刊されたというニュースを聞いて再読したくなった。床下に住み着いている「借り暮らし」の小人たちの物語。全然メルヘンチックでない、たくましく、ちゃっかりした小人たちが出てきて面白い。
スーパーで食糧を買って帰る。焼き鳥一本70円セールをやっていて、3本買う。なぜ3本かというと、3種類あったから一本ずつ、と思ったら、同じやつを間違えて2本買ってしまう。ショック。ちなみに「ねぎま」と普通のやつ。
昨日の夕刊に「マイナー作品に光」という記事があった。結城信一、島村利正といった決して有名ではない作家たちの全集が小出版社によって刊行されているという内容である。その中で、両作家は「ただ事を大切にした作家」と言われている。<ささやかなものを大切にし、その一本一本の糸をたどり織り合わせて入念で美しい人生図を浮上らせる名人>(山室静)何でもないこと、ささやかなこと、そんな「ただ事」を見つめて紡いでいくこと。両人の本を読んでみたい。
大学でゼミ。電車の中で池澤夏樹『スティル・ライフ』を読む。この人の小説をちゃんと読むのは初めてだが、名前がいいとずっと思っていた。(本名かペンネームかは分からないが)「池澤」という姓は水のイメージ、それに夏の樹が重なって、端整でみずみずしい印象。「樹」のつく名前は、春樹(村上春樹)、夏樹(池澤夏樹)、冬樹(モト冬樹)と揃っているが、「秋樹」は聞かない。やっぱり声に出したときに言いにくいからか。「アキキー!」
ゼミのあとはいつもどっと疲れる。解放感のせいか何なのか、帰り道では財布のヒモもゆるんでいろいろと買ってしまう。
今日ははじめにブックオフで内田百�痢惴翆攸�帖』(中公文庫)を買う。そのあと、文教堂書店で庄野潤三『貝がらと海の音』(新潮文庫)。ついでに地元書店の甲文堂で集英社のPR誌「青春と読書」の12月号を手に入れる。(ここは毎月このPR誌だけ山積みにしている)
昨日見た夢が気になっていたので「夢占い」の本を立ち読みチェック。私は海辺のひなびた町にいるのだが、沖のほうからクジラの群れが次々に浜へと押し寄せてくるのだ。浜へ上がって動けなくなったクジラの上にまた他のクジラが重なり、黒い大きな山が出来てゆく。ぞっとするような光景。本によると、クジラは仕事や他人など、とにかく圧倒的に大きな存在の象徴という。それが押し寄せてくるとはいったい何事か。安部公房のエッセイに、陸へと上がろうとするクジラについて書かれたものがあったはずだが、タイトル・内容ともに思い出せない。気になる。
※調べたら、ネット関連の著書を出している「池澤秋樹」という人がいるらしい。筆名らしいけど。「池澤夏樹」のほうは本名だとある人に教えていただいた。また、クジラについての安部公房のエッセイがおさめられているのは『死に急ぐ鯨たち』(新潮文庫)。残念ながら絶版。
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