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●この区切りの日になると、いつもいつも祈るような気持ちになっている。
自分自身に対する不満をあげればきりがなく、「こうありたい、ああ在るべきだ」と自分に言い聞かせて新しい暮らしを促す思いもあるのだが、それよりも、どうであっても生きている喜びの方が強い。
たいした人間ではなくとも、生きていて、時に物を生み出すことにエネルギーを傾けることが出来る。自由に人を愛したり愛されたりすることができる。この「自由」は、結婚しているとかいないとか、恋人がいるとかいないとか、子供がいるとかいないとか、そういった地平をひょいと超えたことろにある。
自分を自由に愛せること。他者を自由に愛せること。世界を自由に愛せること。
この「自由」があるから、わたしは自分がありきたりでも、自分に不満でも、「幸せ」だと、いつも思える。
そして、その「自由」を剥奪された人のことを、祈るようにして思う。この日になると、いつも思う。「平和」ということばはどうも仰々しくて自分との距離を測りかね、わたしはこうして「自由」のことを思う。
生活は、暮らしは、仕事は、忙しくって、忙しくって、目の前のことをクリアしていくことだけに懸命にならざるを得ず、それでも、大事なことからは目を離さずいられるようにしようと、区切りの日に、こうして強く思う。
●こうしたいつもの年末の物思いに囚われ続け、ちっとも仕事が手につかない。思い出したように、いつもは手をつけない部屋の深部を片づけようとしたり、百�里料棺犬鮃�げたり、ふらふらしている間に、1日が過ぎた。
明日からは気を引き締めて仕事しないと、4日の仕事はじめが不安になる。いい仕事をするためには、準備段階でごまかしをしてはいけないのだ。(と、自分に言い聞かせ……)
2004年を迎えた。
たまたまこの日記を読んでくださる人たちへ。
どうぞ……
健康であれ。
幸せであれ。
生きてあれ。
そして。
自由であれ。

| 2003年12月30日(火) |
年の瀬の物思い。●冥土(内田百�痢� |
●復活して、ようやく掃除など。部屋がすっきりと片づくと、物を考えようとしてしまうのは、どういうわけか。はじまってしまった物思いは、それが役に立とうが立つまいが、我知らず去るまで続く。
●金井田英津子氏の挿絵装丁になる、内田百�里涼司喀犬鯑匹燹�「花火」「尽頭子」「烏」「件」「柳藻」「冥土」と、有名なものばかり。あまりの面白さに、頭がくらくらした。
居ても分からぬ此岸と、分かり得ぬ彼岸を、あちらでもなくこちらでもなくたたずむ人。実体と影の見分けがつかず、闇に取り込まれて。
生きていることを、ついつい見直してしまいがちなこの年の瀬に、自分の不確かな足元にふと目を向けさせる、読書時間だった。それでいて、純粋な読書の歓びを感じさせる、日本語の力。
新しいものより、はやりこの手の読み物が好きなのは、どうしたものか。
●恋人より、たぶん、今年最後の電話。いつも、何を話すわけではない。ただ、声を聞くだけでいいのだ。
明日からは、たぶん、一筋に仕事する。年末年始、関係なし。ただ、ついついテレビをつけてしまう。今も、今年起こった重大ニュースを羅列する番組を見ながら書いている。
| 2003年12月29日(月) |
二日酔い。●サウンドトラック(古川日出男) |
●ひどい二日酔いで、1日人に非ずして過ごす。シャンパンとワイン、一人で2本分は飲んでいる。そのあとバーでジンを飲み始め、もう記憶は薄れており。しかも、一晩で3万以上使っていた。もう反省しきり。次のギャラまで倹約しよう。ああ。
●「サウンドトラック」、読み始めは、今年のナンバーワンを覆すかと思えたが、収束の仕方がどうも。印象で言えば、かつて「コインロッカベイビーズ」の読み始めに狂喜し、収束していくにつれ、あれあれ……と思った感じに似ている。面白い状況を呈示することは意外とできるのだ。問題はその状況から何をどう読み取るか、どう読み取っているかの表明とも言える展開の仕方だ。

●恋人と行きつけの店の料理をどうしても味わいたく、女3人の忘年会で予約して行ってみる。
恋人と一緒ではなくても、美味しい料理はやはり美味しく、食べたいだけ食べ、飲みたいだけ飲む。直帰しようとするわたしを女二人が渋谷に拉致して、女4人に増幅。また、酒を飲む。
旨いものは、誰と食べても旨い。ただ、個人的に微かな隙間風が吹く。
●とりあえず仕事納め。4日の仕事はじめまで、とりあえず決められた外出仕事はない。ゆっくり読んで、ゆっくり仕事して、万全の状態で新年の仕事を迎えよう。

| 2003年12月27日(土) |
妄想の東京に拉致されて。●TEN MINIUTES OLDER THE TRUMPET |
●10時頃にはベッドに入ったというのに、眠ったのは午前6時。ずっと「サウンドトラック」を読み続けていた。読み続けるとは言っても、作者の妄想世界が強烈なので、時折休みをいれてベッドから起き出し、書いたりなんだりを差し挟みながら、だ。年末にとんでもない本を読み出してしまったなあ。まだ半分しか読んでいないけれど、半分までは間違いなく傑作。
●8時に起きるはずが、目が覚めたら13時過ぎ。……とんでもない寝坊をやらかした。仕事をひとつ飛ばす。まあ、顔つなぎに必要かと思われた程度のものだったので、さほど反省もせずに15時からの現場へ。場所が恵比寿だったので、ガーデンプレイスで映画を観て帰る。「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」
これは時間をテーマに7人の監督が10分という時間枠で作ったオムニバス。この7人がすごい。
○アキ・カウリスマキ ○ビクトル・エリセ ○ヴェルナー・ヘルツォーク ○ジム・ジャームッシュ ○スパイク・リー ○ヴィム・ヴェンダース ○チェン・カイコー
このところすっかり映画館から遠のいてしまったわたしだが、20代から30代前半にかけては、暇さえあれば映画を観ていた。そのころの記憶を彩る名前ばかりだ。特にビクトル・エリセのフィルムには長らくお目にかかれなかったので、柔らかな映像が銀幕に広がったときは、それだけで目が熱くなってきた。もちろん、あまりに美しかったから。
一人一人の監督の、記憶すべきフィルムについて書きまくりたい気分でもあるが、今はどうも、「サウンドトラック」に心が拉致されているようだ。すぐにもまたページをめくりたい。
実際、映画を見終わったあと、すぐにカフェに入り、映画について書き留めることもせず、本を開いた。
●明日は、外に出て行く仕事としては最後の日。女3人の忘年会も待っている。「サウンドトラック」の妄想の東京から離れて、現実の下北沢で美味しい料理に舌鼓をうち、甘い酒に身体を委ねよう。

※ニフティが提供しているココログというシステムを使って、新しいページを作ってみた。Etceteraより気軽に写真をアップしたり、日記で言及したことにリンクすることを集めたり、Web上で気になった記事をメモしたり、といった感じで作ってみようと思っている。
→Another Ultramarine
●昨夜、ほとんど眠れないままに、朝新幹線に乗り込む。車内で少しは寝ようと思っていたが、乗車時間を使って、打ち合わせの嵐。それに、最近ののぞみは、とっても速いし。
名古屋の子供たちは、なぜか東京の子よりのびのびしていて、元気はつらつ。東京の子役たちは、児童劇団の馬鹿な大人たちに、判で押したような挨拶を教えられていて可哀相だったりするが(たとえばマクドナルドの売り子のように同じトーンで、「おはようございます」とか「よろしくお願いします」とか「ありがとうございました」とかマニュアル台詞をインプットされていて、ちっとも子供らしさがない!)、今日の子供たちは、それぞれがそれぞれで、なかなか面白かった。ついつい余計なことを質問してお話して、楽しんでしまう。年末にやきもきと過ごすのは可哀相なので、その場で結果を発表してきた。
●帰りの車内も、結局白熱する打ち合わせ。おかげで、まだ9時過ぎだというのに、もう眠い。ああ、もう本を持ってベッドへ入ってしまおうか?
| 2003年12月25日(木) |
長いつきあいだの。一瞬の出会いだの。 |
●稽古場を抜けて、仲間の本番を見に日比谷へ。
有楽町から日比谷公園に向けて、なんだかパリにも負けじの雰囲気のライトアップポイントが。しかも黒山の人だかり。急いでいたから通り過ぎてしまったけれど、何だったんだろうなあ。クリスマス、みんな楽しんだろうか?
●本番を見て、楽屋回りして、知り合いの俳優たちを激励。その後、20年来の仲間たちの楽屋で、ビールを囲む。知り合って20年たってしまったということに内心驚きつつ、馬鹿話と真面目な話を交互に織り交ぜ、ほんの15分ほどの飲み会。
わたし、友だちって呼べる人なんて、ほんと、一握りしかいないような気がするけれど、仲間だったらいっぱいいる。様々な苦楽を共にしてきた、それぞれの弱みも強みも知り合った、仲間たち。奴らと過ごすのは、掛け値なく楽しい。しかし、仲間と認めるのも、わたしの場合男が多い。女たちはどうも面倒くさくって。イマイチさっぱりしてなくって。
でも、今年唯一の忘年会は、女3人で開く(忘年会嫌いなので例年ほとんど参加しないのだ)。なぜかわたしを「姫」と呼んで慕う駆け出しプロデューサーS嬢と、今年一度も一緒に仕事しなかったM嬢。二人とも年下だけれど、なぜか妙に「女であること」を共有できる。わたしの行きつけイタリアンを予約して、ゆっくり食事とワインの予定。楽しい夜になりそうだ。
●明日はオーディションで名古屋へ。
昨夜、テレビで新人タレントオーディションのドキュメンタリーをやっていて、ついつい最後まで見てしまったが、オーディションってのは、それがどんなレベルでどんな類のものであれ、ちょっとしたドラマになる。才能のある人であろうが、ない人であろうが、運のある人だろうが、ない人だろうが、夢見る権利は平等だ。正しく夢見ること、正しく欲望することが、ここでも一歩先行く秘訣だ。
今や、自分が人をオーディションする立場になってしまった。そのたびに、夢見る人たちと、一瞬でも、人として真っ直ぐ向かい合おうと思う。
明日は、子役のオーディションなので、ちょっと話はまた別。いきなり泣き出してしまう子もいたり、大きな傷をつけてしまう場合もあるので、半分は保母さんお母さんモードに入る。
●昨日からのベッドの友、古川日出男「サウンドトラック」、傑作の予感。このところ仕事と恋人のことでいっぱいいっぱいだったわたしを、いきなりぐぐっと読書の歓びに引き戻してくれそう。
| 2003年12月24日(水) |
たとえそれが幻想であっても。 |
●気がついたら、クリスマスイブだった。稽古場のケータリングにケーキが置いてあったり、帰り道、駅デパートの食品売り場から長い行列が外まではみ出していたり(ケーキと、洋総菜と、チキンの行列!)。みんな、クリスマスに思い入れがあると大変だなあ。
大学に入って、東京で一人暮らしを始めてから、ずっとこの業界にいるものだから、どうも社会の暦とずれてわたしは過ごしている。土日もないし、盆休み正月休みも特にないし、ゴールデンウィークとかクリスマスも同じこと。若くてあんまり仕事がない時は、そういう時はずっとバイトしてたしなあ……。
気が楽、といえばそう。でも。何やら世間から遠く離れているような寂しさを覚えなかったと言えば、嘘。若いときは、けっこう賑わいに背を向けてすねてた気がする。大体、何かを否定するってことは、何かに囚われているってことだから。
それもなあ、この年になってみれば、ずいぶん楽になっちゃって。かつてのヴィヴィッドな世間への反発みたいなものが、懐かしかったりもする今日この頃。
●クリスマスイブだから、世間が穏やかで幸せかと言えば、ちーっともそんなことはなくって。なんだか満員電車の中はいつもより殺気だっていた気がする。降車客が降りきる前に、身体をがんがんぶつけて侵入してくる乗車客たち。鞄があたって、「ちっ!」と舌打ちしていく女の子。子供連れを前に眠ったふりする若いサラリーマン。
余裕がないのが、年末。
ついつい振り返ってしまうのが年末。
自殺者続発の、年末。
クリスマスである前に、今は年の瀬で、このはっきりしない、面倒な小さな国では、弱い人が余裕を持って暮らすことが難しい。
クリスマスっていう、共同幻想の日くらいは、一人でも多くの人の胸にぽっと灯の点る瞬間があって欲しいと、願ったりもする。

| 2003年12月23日(火) |
年末。●廃墟の歌声(ジェラルド・カーシュ) |
●今年は仕事納めが28日と、例年より早い。仕事始めも4日と遅い。まあ、家でちょいこちょこ来年の仕事の準備は続けるが、まず喜ばしいことだ。去年は30日まで働いて、2日が仕事はじめだった。……素晴らしい。
●パリ話。
別れの日。モンパルナスからエールフランスバスに乗って飛行場へ。わたしはかなりナーバスな状態。空港に着いて、また涙の嵐になるかと思っていたら、チェックインの段階で大問題。エールフランス側のミスによるオーバーブッキング。格安航空券のわたしは13時15分のフライトから23時半のフライトに移る可能性があるという。結果が出るまで1時間。彼は次の仕事に向かわねばならず、不安なまま涙の別れ。
1時間後、待っていた結果は、予定通り乗れるし、しかもビジネスクラスに振り替えという嬉しい知らせ。
貧乏人のわたしはもちろんエコノミーしか乗ったことがないから、別れでナーバスになった気持ちを少し晴らしてくれる快適な復路になった。
エコノミーとここまで違うかというサービスの連続。厳選されたお酒と美味しいフランス料理。ゆとりのある座席は、足のむくまない心地よいリクライニング。見やすいモニターで2本の映画を鑑賞。一本は今年の春読んで大感動した「穴」の映画化。英語版でも十分に楽しめた。……12時間のフライトがあっという間。お金があると、人生ってある程度は快適になるものなのね。
ちなみに、フライトの変更の憂き目にあった場合は、5万円相当の現金か、9万円相当のエールフランス旅行券がいただけたらしい。今思えば、それでもよかったかなあ。
……と、恋人と遠ざかり涙に暮れながらも、ちゃっかり人生は楽しんでいる。人間って、こういうものなのだね。
●今日は稽古場にいて、「欲望」ってものについてずっと考えていた。
結局は、欲望の強い人間が、遠くに行ける。正しく欲望を持つ者が、多くを勝ち取る。それがどんな欲望であれ。欲望を持ち続けることで、先へ、先へと進んでいける。
このところ、わたしは自分の欲望に対して、実に淡い対峙の仕方しかしてこなかった。何もかもが中途半端で。
自分の欲望に正直であるということは、自分を認めつつ、正しく自己批判できるということでもある。
来年は、来年は、と、心の蠢く、年末。
●今日はこないだまでの仕事資料の整理とか、読みかけの本を読んだりとか、掃除したりとか、まあ、あれこれで終わった。
一日中、次の仕事の電話を受けていたせいか、すっかりパリの哀しみから逃れ、もう涙も出なくなった。早いなあ、まったく。喜ばしいことでもあり、ちょっと寂しくもあり。(こういうモードの切り替えが早くなるのは、仕事好きなせい?)
●パリはクリスマス色に溢れていた。ギャラリーラファイエット(有名デパート)の電飾なんて、もう笑っちゃうほど。わたしたちは仕込みの大変さを思い、「ご苦労様」って思いながらしばし眺めた。とにかく、デパートの壁全体が電飾で覆われているんだもの。ウィンドウショッピングの末、ホテルの夜を楽しむためのシャンパンとチーズを購入。
2日目に行ったシャルトルは、パリから急行で1時間余の美しい街。有名なノートルダム寺院のステンドグラスが素晴らしい。ここで出会った青の聖母子像は、近いうちにEtceteraのページで紹介するつもり。
ルーブルで様々な出会いをし、モンパルナスからオペラまでセーヌを渡って何度か散歩し、オペラを2本観て。あっという間に3日間は終わり。
どうせ3日間、たったの3日間、会えるのは3日に限られていたのだから、ご機嫌に過ごしてくればよかったのだが、ちっぽけなわたしはそうもいかない。再会の瞬間から、3日後の別れの瞬間に怯えていた。楽しくもあり、寂しくもあった3日間。
●明日から仕事再開。来年のための準備作業をひたすらやって、パリで頑張る彼に並ぼう。

※HP"Etcetera"に「ルーブルで出会った、もうひとりのマグダラのマリア」をアップ。
●帰ってきた。
帰ってきたら、ゆっくりパリのことでも書こうと思っていたが、恋人とまた離れてしまった寂しさ哀しさで、何も手につかず、呆然として過ごしている。
●わたしは一人が好きだ。一人でいるから寂しいのではない。
いるべき人の不在が寂しい、哀しい。
もちろん、その人が存在しなかったら、もっと寂しいのだが、今は、ついさっきまで自分のからだに感じていた温もりが失せて、とまどいを隠せない。
突然、ほろほろと泣いてしまう。別れるときにいったんは止めた涙が、今も、思い出したようにはらはらとこぼれてくる。
だからと言って、行かなきゃよかったなんて、そんなことは思わない。ただ、今は哀しくて、どうしようもない。
しばらくしたら、その不在に耐えて、また一人で暮らし、一人で闘っていかなければいけないことは分かっている。今は、どうしようもなく、不在の哀しみと同居する。

●仕事をして、歯医者にも行って、買い物もして、打ち合わせして、帰宅したのは23時。3時の今、ようやくほぼ荷造りを終えたところ。5時半には家を出て、成田エクスプレスに乗り込む。
風邪の症状は続き、何やら微熱状態。このまま寝ずに準備を続けて、飛行機の中で熟睡できるだろう。
余りにもバタバタしているので、パリに飛ぶのだという実感がない。着いてはじめて、なんだろう。それにしても、言葉の全くわからない国に行くというのはなんだか心細い。昨年の秋、仕事でパリに行ったが、劇場で日本語をしゃべっていれば事足りた。バカンスとなるとねえ……。恋人にひたすら頼る旅になりそう。これは旅の醍醐味半減だが、まあ、恋人に会うことが第一義なので、仕方ない。
●来年初頭の仕事があまりに大変そうなので、今から気がもめる。21日に帰国してから年末まで、すでに仕事がぎっしり詰まっている。年内の頑張りが来年の仕事はじめに影響してくるので、とにかくやれることはやろう。……なんて思いながら、今日一日は仕事したが、明日からはすっかり忘れるつもり。仕事を喚起させるものもスーツケースにはいれない。このバカンスが終わったら、来年の8月まで休みなく仕事しなきゃいけないんだもの。5日間くらいはいいじゃないか。
●旅に出る前は、ついつい財布の紐がゆるんでしまう。昨年ロシアに発つ前には、10万超えのバーバリのダウンコートを購入。今日は、オペラの夜のために、またまたバーバリのドレスだの、ジーンズだの、セーターだの購入。デパートを出た時はしきりに反省したが、これがまた旅の楽しみ。
さて。
荷詰めの続きをして、部屋をさくさく片づけて、シャワーを浴びて、出かけよう。眠気と闘い、わくわくしながら。
●終わった。実に実に、幸福に。
若者たちは感涙し。大人たちも、めったに出会えない素晴らしい現場を称え合う。
打ち上げが催され、酒を飲み交わしたが、余りに素晴らしい仕事だったので、おまけはいらない。わたしは宴の途中で抜け出し、明日の仕事の準備へ。
●来年初頭の仕事の準備を明日1日こなし、そのままパリへ発つ。
ただ、身体が重い。大変な虚脱状態で熱っぽい。いつも、大事な仕事をしているとき、私の身体は不調を訴えるのを待ってくれる。仕事が一段落するまで。……このたびもそうなのか? 恋人と再会することだって、わたしの大事な人生の出来事なのだ、身体よ、崩れるならもうちょっと待ってくれ!
●家に着いてから、テレビに釘付け。フセインが逮捕された……。
●10月頭からかかりきりだった仕事も、明日が最終日。2ヶ月半を共に過ごした仲間たちとも、これでまた次の出会いまでのお別れ。いい仕事だっただけに、いつもより寂しい気持ちが募る。
とにかく、よき千穐楽を迎えたい。明日は朝から、カーテンコールスペシャルバージョンの作戦を練らないと!
●新聞を開くとうんざりすることばかりで、特にティクリートでの外交官殺害テロから自衛隊派遣決定までの流れは、もう、何をか言わんや。
救いの少ない世の中にいて、何かを書き留めておきたくても、わずかな自分の夜の時間をさくだけの気持ちになれず、どんどん筆無精になっていく。逆に、仕事場での幸福は自分の身体に近いものだから、書き留めておく必要も感じず、またまた筆無精に。
きっと、仕事があさって一段落して、しあさっての朝飛行機に乗り込んだ途端、書きたくなるのではないかと予感している。でも、徹夜明けで乗り込むから、爆睡しちゃうんだろうなあ。
●観客で一杯の劇場は、やっぱりいい。
毎日、キャストやスタッフが劇場入りする前に、もう当日客が多勢の列をなしている。客席は、臨時に出したパイプ椅子や立ち見客で一杯。
多人数の空間を支配する静寂と、拍手による喧噪のコントラストに、心動かされる。
●本番をランニングしながら、新作の稽古場を見学したり、先の仕事の準備をしたり、多忙きわまる。それでも、何か足りない気がしてしまうのは、贅沢なのか、常なる問題意識として当然なのか?
いい仕事をすればするほど、もっと先に行かなくてはと、あせっている自分が常にいる。
休んでいる時間などないぞと思いつつも、心は5日後に発つパリに向けて弾んでいる。予定ではブリュッセルまで小旅行してブリューゲルを見、パリでオペラを見る予定だが、さてどうなるか。もちろん、恋人と久しぶりに会うだけで、それだけでもよいのだが。
| 2003年12月07日(日) |
今、生きていること。 |
●あと一週間公演は残っているんだけれど、一足早い、スタッフ打ち上げ。明日はOFFなれど、次作のプレ稽古が入っているから早く帰ろうと思っていたのに、ついつい長居。仕事の話の末、可愛がっている後輩プロデューサーから、恋愛相談を受けることしばし。こと恋愛の話になると、愚かなわたしは引き出しにことかかないので、ついつい。……これまで、どれほどの恋愛相談を受けてきたことか……。自分の恋愛に関してはほぼ誰にも相談など持ちかけたことなどないわたしが、人からこれほど相談されるのはなぜ? やっぱり、愚かな匂いがするからか?
●仕事のこと。間もなくパリで再会する恋人のこと。片づけなければいけない仕事は山積みだし。心は揺れ、身体は忙しく。なんだか12月って感じ。
生きていることの、基本的な悩みはつきまとう。いつだって。
でも、今生きていることに付随することが強烈なので、なんとか基本的な不安に悩まされずに暮らしている。
愛する対象を失ってしまうこととか、仕事を失ってしまうこと(仕事のできない状況に陥ってしまうこと)が、とても怖い。
元気で、生き続けたい。できうる限り。
●今夜は夜公演のあと、劇場のお偉方からお招きを頂き、慰労会。わたし一人のための慰労会だから恐れ入る。風邪でばて気味なので美味しくお酒を頂くことができない身体ながらも、楽しい時間を過ごす。
それにしても、わたしは大体、大きな仕事が終わって一段落すると、がくっと体調を崩す質なので、この先が心配。
この仕事を終えて、翌日、一日中先の仕事の準備をひたすらにやって、徹夜明けで飛行機に乗ることになりそう。……恋人は今からそのことを心配しているようだ。
人一倍元気に働いていたわたしが、一気に体調を崩す様を、何度かその目で見ているから。
●このところベッドに連れていく本は、ジェラルド・カーシュという作家の「廃墟の歌声」。これが実に面白い。突拍子もない物語世界にぐいぐい引き込んでくれるのが、たまらなく嬉しい。一気に読むのがもったいなく、短篇を少しずつ読んでいる。
一つ読み終えて、とっぷりと物語世界の中、想像力で遊んだあとは、ぼんやり恋人のことを考える。パリで再会する瞬間のことを想像する。そうこうしていると、いつも眠りの中。
報われても報われなくても、「恋しい」と思う人のいることが、わたしの日々を支える。少なくとも、わたしの場合はそうだ。
| 2003年12月02日(火) |
渡仏準備やら、仕事づくめの生活やら、知恵熱やら。 |
●このところ、渡仏のための準備に明け暮れていた。仕事、仕事で、プライヴェートタイムが少ないので、ひたすらに。
ようやくエールフランスで安めのチケットを入手し、一泊目にモンパルナスのホテルをとり……これは手頃な空き室が少なく予算オーヴァーだったけど……。
恋人と会ってからは、ブリュッセルへの小旅行にすぐ出かける予定。大野和士が芸術監督を努めている、小振りなオペラハウスがある。チケットが取れれば是非出かけたい。
なるべく荷物を少なめにして、身軽に飛び回ろう。
4月に仕事でロンドンには行ったものの、バカンスで一人で海外に出るのは1年ぶりなので、もうウキウキ。昨年のロシア旅行はそりゃあそりゃあ心に残るものだった。色んな意味で。今度はどうなるだろう……。
●5日間日本から離れるために(本当は6日間だが、朝着便なのですぐ東京に戻って働けるのだ!)次の仕事の準備が山積み。現行の仕事をこなしながらなので、カレンダーのその日その日にやるべきことを列挙して、ひとつひとつ潰しながら暮らしている。
●先のバカンスは実に楽しみだが、現行の仕事も、素晴らしい状況で進行中。若さと、勢いと、熱情と、清冽さと。
負けないように、負けないように、1日1日に真剣に向き合おうとするのだが…………いやいや、自己否定ばっかりしてないで、前を向いて歩いていこう。
そのためには、元気でいること。
昨日だって、このところの疲れが一気に出て、いつもの知恵熱を出し、1日ベッドで寝て暮らしたのだもの。まあ、今日はすでにぴんぴんしているのだから、いつもの「休みなさい!」っていう我が身体からの勧告だったのだろう。
とにかく、元気でいること。元気で扉を開けて、外に出ていくこと。またある時は、元気な状態で自分に対峙すること。