泡とガラス玉


2005年12月30日(金)      タズネビト


あの人は どこへ行ってしまったのだろう
くすんだ色の服を着て
懐かしい光の匂いがしていた

今の私は
人通りの多い街を歩いていると
益々孤独になってゆく

着飾った身体と嘘の心から抜け出て
透明になった姿のまま
あの人を探せば
見つかるんだろうか


幼い頃時々感じた
長いアスファルトの路が雨で濡れていて
暗い灰色の雲から光が差し込むまぶしい日だった
一軒家の影が強く並び
まるで違う世界のようだった
吹く風は冷たく暖かかった
そしてとてもいい匂いを運んできた
草原のような
お日様のような
黄色い傘が水溜りを滑って
飛沫が舞った


今どうして
涙がでてきたのか
考えてみる


どこかにいて
全て知っている
金色の麦畑 三日月の先 夜の僅かな光
雲を貫通する光の矢 暖かい土の匂い
畑に育つ緑色の木
どこかにいるはずで
でもとてもうるさい日常には存在せず


尋ね人がいるのです
夢の中で探し続けます
一人になったとき耳をすまします


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