目の前の石を磨いても 美しい宝石にはならない だけどこの石を磨く時 星のような小さな欠片がキラキラと床に落ちる
それは 磨師が肩を落として 作業場を去った後に 窓から入った風と共に空高く舞い上がり
世界中の空を輝かせる
そして見上げた誰かの心に落ちては 雨のように波紋が響きあう
誰かは自殺を思いとどまり 誰かは許し 誰かは救い 誰かは愛した
出来そこないの磨師は 相変わらず落ち窪んだ目で背中を丸め かたいパンをかじり 継ぎはぎだらけのベッドにもぐりこみ 次の朝を迎える そして今日も作業場へ向かう。 大きな宝石を夢見ながら | |
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