泡とガラス玉


2006年02月14日(火)      アルヒト


目の前の石を磨いても
美しい宝石にはならない
だけどこの石を磨く時
星のような小さな欠片がキラキラと床に落ちる

それは
磨師が肩を落として
作業場を去った後に
窓から入った風と共に空高く舞い上がり

世界中の空を輝かせる

そして見上げた誰かの心に落ちては
雨のように波紋が響きあう

誰かは自殺を思いとどまり
誰かは許し
誰かは救い
誰かは愛した


出来そこないの磨師は
相変わらず落ち窪んだ目で背中を丸め
かたいパンをかじり
継ぎはぎだらけのベッドにもぐりこみ
次の朝を迎える
そして今日も作業場へ向かう。
大きな宝石を夢見ながら


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