便蛇民の裏庭
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それでなくてもクラスから浮いた存在だった。 転入してきて、ひとつ年上で。 その転校や留年の理由はとんでもないことになってた。
ぼくが一番驚いたのは 暴走族のアタマの子供を妊娠して中絶。 学校に居られなくなって留年して転校したというもの。 みんなドラマの見過ぎだろう。
ぼくは当時、今みたく金髪だったわけでもない。 いたって目立たない普通の生徒だった。 でも、そんな噂はなかなか消えなかった。
普通に恋の話をしたくても 「あんたからしたら、私たちの恋愛なんかばかばかしいでしょ」 「子供だと思ってるんでしょ」 そんな風にいわれたり。
そしてなぜか、いつも恋の相談を受けてた。 普段親しくもないのに そんな時だけ寄ってきて、解決したら去っていく。 ぼくは来る者は拒まないし去る者も追わない。
でも、恋くらいしたい。 誰かを好きになって、 目が合ったとか、話ができたとか、 ドキドキしてみたい。
14の冬、ぼくの操は失われた。
もう恋愛も結婚も、できないと思った。 男性に触れることなんか、できそうにない。 クラスの男の子すらみんな怖かった。
15の冬、ぼくは告白をされた。 しかも授業中。
「ぼくはもう処女じゃないし、普通の子じゃないから」 「彼氏が居るの?」 「・・・いやー、レイプされちゃってねーあはは」
なぜそんなことをいってしまったのだろう。
彼は涙を流した。 鼻水をたらしてボロボロ泣いた。
「ひどい、なんてひどいことをするんだ。 男の方が絶対に力も強いのに、何で女の子を無理やり・・・」
ぼくをヤったのは男。 でも、目の前で泣いているこの人も、男。
目の前でぐちゃぐちゃになってぼくのために泣いている 頼りなさげなこの少年に、 ぼくは一瞬で恋に落ちた。
そしてその冬、ぼくのリハビリが始まった。
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