便蛇民の裏庭
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2002年02月01日(金) まる1年

父さんが死んで、1年経った。
去年のことが、まるで夢みたい。

今年はいつもの年よりもたくさんの年賀状がきた。
ぼくもたくさん出した。
不幸があったなんてまったく思わない。

父さん。
ぼくのところに、ようやく帰ってきたね。

ぼくはきっと、父さんのことを
いつだって抱きしめたかったんだよ。

でも、父さんを憎まないで、どうやったら生きてこれた?

母さんに愛されるために、
ぼくは父さんを憎むしかなかった。

鏡を見れば、そこには父さんが映る。

ぼくの中には父さんと同じ血が流れてる。
父さんの精子と母さんの卵子から作られたんだよ。

親戚はいう。

おまえの父さんは顔だけはイイ男だったからな

写真によってはジョン・レノンみたいだったり、
母さんがいうには陣内孝則だったり石井竜也だったり。
ようは鼻に特徴があるってことか?

ぼくは母さんに内緒で、父さんの写真を一枚だけ持ってた。
まだ母さんと知り合う前の白黒写真。

母さんはそれを見つけてすごく怒り狂ったよね。
そんなに父さんがいいなら父さんのところへ行けって。

ぼくは母さんの目の前で、その写真を破り捨てた。
泣きながら。

その写真は、今でも持ってる。
セロテープで段違いになった状態のまま貼りつけられたゆがんだ顔は
ちょっと笑っているみたいだよ。

いまさら遅いけど。
せめて生きているうちに、
会っておけばよかったよ。






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