便蛇民の裏庭
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彼女がご主人の元へ帰ってしまって ぼくはなんだか少しだけ、空っぽになっている。
夜中に電話が鳴ることはもうないのかな。 一緒に釣に行こうっていってたのに、結局行けないままだった。 会おうと思えばいつだって会えるんだろうけれど 遠いとなかなかそうもいかないね。
あれは彼女と飲みに行ったとき。 夜中1時くらいだろうか、彼女が迎えに来たのは。
ぼくは助手席に乗った。 お店に向かってしばらく走った時、ぼくはふっと後ろを振り返った。
「なに?」
「ん?いや、今の男の子、こんな時間になにやってるのかと思ってさ」
「男の子?」
「白い柵に腰掛けてリュック覗いてたでしょ」
「バス停のとこの?」
「そうそう、あの子。小学生っぽくなかった?」
「こんな時間にバスはこないよ」
黄色いTシャツ姿。
まだ雪が残っていた。
あぁ、彼はもう、いないんだ。
「ふつーにいるよね」
「そうだね。あんまりフツウで気付かないくらいだね」
ただ、彼はあまりにはっきりと見えていた。 目が悪くてろくにものがはっきり見えないぼくの目に。
フツウに傍にいて欲しい。 遠くっても。
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