便蛇民の裏庭
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相方の無呼吸の診察のため、一緒に病院へ行った。 最初は呼吸器科に、次に耳鼻科にまわされ、それだけで30分のロス。
耳鼻科についてから診療してもらうまで待ち時間2時間。 鼻と喉のレントゲンを撮影してさらに待つ。 診察自体は10分程度。
案の定、手術確定。
「あーコレは詰まりそうな鼻してるわぁ。ちょっと削ろう。 扁桃腺もでっかいし。コレ取っただけでかなり治るよ」
全身麻酔、一週間の入院。 大きな溜息、青ざめた顔の相方。
「なに、どうしたの」
「だってさぁ、手術だよ!?しゅ・じゅ・つ!全身麻酔だよ!?」
ぼくが出産で入院してた時も、お義母さんが痔で入院してた時も 娘がソケイヘルニアで入院してた時も、子がダブルで中耳炎と肺炎で入院してた時も
『いいなぁー、俺も入院してみたいなぁー』
っていってなかったっけ? 念願の入院生活じゃないのぉ、よかったねぇ。
予約でいっぱいなのでどんなに早くても手術は7月の末。
「7月末手術だったらキャンプ行けなくなっちゃうよねぇ」
・・・ナニを心配しているんだ。
「8月の方がイイかなぁ・・・それとも9月・・・」
怖いのだね?怖いのだね?怖いのだね?
昼飯、何処でなにを食べようかはしゃぐぼく。溜息の相方。
「なに、元気ないねぇ」
「だってさぁ、全身麻酔で死ぬかもしれないし、手術ミスで死ぬかもしれないし」
ああ、この人は母上の子だ、と実感する。 ため息と共にご飯を食べる相方。
「お昼も食べたし、どうする?帰る?」
「オレ、死んじゃうかもしれないし、好きなことしてイイ?」
「あーはいはいはい、どうぞお好きに」
連れ込まれたのは新しくできたパチンコ屋。 だからさー、わかんないんだってばスロットなんか。 しぶしぶ台に立ち向かう。敵は『不二子』だ。
ちゃりんちゃりんちゃりん。 ・・・・。
「で、どこ押すの?」
「ココ押してココね」
ぽちっ。ぷちっぷちっぷちっ。
訳のわからないまま、 ちゃりんちゃりんちゃりん。ぽちっ。ぷちっぷちっぷちっ。 ちゃりんちゃりんちゃりん。ぽちっ。ぷちっぷちっぷちっ。
「・・・さっきからナニ笑ってんだよっ」
「だってスロットやってる便かわいいんだもん。 見た目常連みたいな格好してんのに手元おぼつかないし」
だからイヤなんだよぅ。
ちゃりんちゃりんちゃりん。ぽちっ。ぷちっぷちっぷちっ。 ちゃりんちゃりんちゃりん。ぽちっ。ぷちっぷちっぷちっ。
「あ、ちょっと待って、きたかも」
相方が押す。 台が派手な音と光の競演を開始する。 おなじみのルパン三世の音楽。
「ほら、コレでもう1万2千円になった」
訳のわからないまま千円が1万2千円に増えたらしい。 教えられた通りに繰り返す。 だんだん自分がなにをしているのかわからなくなってくる。 隣の台の男のタバコが煙たい。目が痛い。 相方の台も何か始まったらしい。
「ねぇ、もうイイ?それ終わったらもうやめよう?」
「え、もうやめるの?もう一度来そうだよ、その台」
「いや、イイ、もうやめよう」(タバコの煙で涙目)
二人で2万数千円を手にパチンコ屋をあとにする。
「さーて、ドコ行きたい?」
「小樽」
「小樽ぅ?まぁイイけど」
スロットですっかり気分がよくなったらしい相方。
誰も乗っていない観覧車に高所恐怖症気味の相方を引っ張り込む。 ゴンドラ内で手すりにつかまったまま身動きしない。
「コレさー、もっとうんとスピードが早かったら、かなりの絶叫マシンだよねぇ」
「やめてくれ。チカラ抜ける。それでなくっても下半身ムズムズするのに」
思い切りゴンドラを揺らしたい衝動に駆られる。
「・・・お前今、思い切り揺らしてーとか思っただろ」
にやっ
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