便蛇民の裏庭
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母上と子供と4人で病院へ。 なんだかよく理解していない子供たちは ピクニック気分でお見舞いに行く気マンマン。
「ぼくね、お父さんにかみしばい作ったの!もっていくんだ!」
『おとなしレータの話』 それはレータという犬の冒険のお話。 そういう才能はたいそう豊かなようす。
相方の鼻は通常の1.5倍くらいになっていた。 点滴も外され酸素吸入もしていないので そこそこ元気に見える。
しかし1.5倍の鼻と鼻の穴(綿が詰っている)に子供たちはたじろいだ。 恐る恐る近付く。じっと見つめる。 前日の姿を見せずに済んでよかったかもしれない。
落ちつかなげに子供たちを連れて何度も院内散歩に出かけていく母上。 相方の姿を見ていられないに違いない。
相方の父上は入院後3日目で亡くなった。 その記憶がよぎるのかもしれない。
相方がポツリという。
「昨日は便が手を握っててくれたのだけはよく覚えてる」
珍しく相方が素直だ。 というか弱気だ。
「切除した扁桃腺を無理やり見せられたのは?」 「あー、なんとなく覚えてる!赤い塊?」 「そうそうソレ」
そういいながら手を握る。 そんな相方の指に結婚指輪ははまっていない。
「あ、そうだ、手術前に抜いていくようにいわれて抜いたんだった」
一生懸命はめようとするが指がむくんでいてうまく入らない。 その指にはしっかりと指輪の日焼けあとがついている。
子供たちが飽きて騒ぎ出したので連れ帰る事にした。 それじゃまたね、と手をふって病室を出る。 子供たちは相変わらず大声ではしゃいでいて 母上に頭を小突かれている。
夕方、一人自転車で病院へ向かう。 相方の病室に電話をかける。
「何か欲しいものある?」 「なんかマンガの本が欲しい」 「マックにいるんだけどマックシェイク食べれそう?」 「食べる」
それらを買って病室につくと相方はテレビを見ていた。 買ってきたものをテーブルに並べていると相方がまたも呟く。
「今日はもう来ないかと思ってた」
どうした相方。 念願の入院生活はそんなに淋しいかい?
隣に座るとそっと手を掴む。
「いるとうるさいけど、いないと淋しいもんだな」
ぼく、うるさかったのか・・・
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