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悦子は部屋の掃除中。オーディオから流れ る、アルバム『平原綾香「ODYSSEY」』は、 掃除機の音でかき消されている。 ◇ 愛されるか、愛されないか、その夢が本物 か、本物でないか、分からない期間を神様 に与えられた悦子にとって、それは一番苦 しい時であり、自分の「愛」や「志」の強さ を試される時でもあった。 その愛、その夢を続けるには、かなりの集 中力と努力が必要。嘘や誤魔化しで作られ たものは、すぐに消えてなくなってしまう。 生きるのに不器用な悦子でも、それだけは、 なんとなく理解していた。 だから、人間の持つ「弱さ」から目を背けな い自分でいられるように、まずは自分の足 で歩いていくことを心に決め、誰にも頼るこ となく、混沌とした日々を過ごしていた。 すると、ある日突然、悦子の心に「愛」と「希 望」が宿り、「明るい未来」がイメージできる ようになっていた。悦子はひとりの人間とし て、「強さ」と「余裕」が生まれたのだと喜ん だ。 だが、そんな悦子の側で、「必要」を見つけ て支えてくれてた、家族や友人、恋人がい たことを、悦子はまだ気がついていない。 ◇ ♪私たちは誰も ひとりじゃない ありのままでずっと 愛されてる 望むように生きて 輝く未来を いつまでも歌うわ あなたのために♪ 悦子が掃除機を止める少し前に、アルバム の最後「Jupiter」の演奏が終了していた。
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