nomiの思考

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1分間小説「ひとりじゃない」
2004年06月03日(木)

悦子は部屋の掃除中。オーディオから流れ
る、アルバム『平原綾香「ODYSSEY」』は、
掃除機の音でかき消されている。

           ◇

愛されるか、愛されないか、その夢が本物
か、本物でないか、分からない期間を神様
に与えられた悦子にとって、それは一番苦
しい時であり、自分の「愛」や「志」の強さ
を試される時でもあった。

その愛、その夢を続けるには、かなりの集
中力と努力が必要。嘘や誤魔化しで作られ
たものは、すぐに消えてなくなってしまう。
生きるのに不器用な悦子でも、それだけは、
なんとなく理解していた。

だから、人間の持つ「弱さ」から目を背けな
い自分でいられるように、まずは自分の足
で歩いていくことを心に決め、誰にも頼るこ
となく、混沌とした日々を過ごしていた。

すると、ある日突然、悦子の心に「愛」と「希
望」が宿り、「明るい未来」がイメージできる
ようになっていた。悦子はひとりの人間とし
て、「強さ」と「余裕」が生まれたのだと喜ん
だ。

だが、そんな悦子の側で、「必要」を見つけ
て支えてくれてた、家族や友人、恋人がい
たことを、悦子はまだ気がついていない。

           ◇

♪私たちは誰も ひとりじゃない
 ありのままでずっと 愛されてる
 望むように生きて 輝く未来を
 いつまでも歌うわ あなたのために♪

悦子が掃除機を止める少し前に、アルバム
の最後「Jupiter」の演奏が終了していた。




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