nomiの思考

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1分間小説「理由なんかいらない」
2004年06月24日(木)

英会話スクールに向かう途中。暁彦の心は
かげっていた。好きではじめたはずの英語
の勉強が、楽しくないのだ。それでも、なぜ
勉強を続けるのかが分からない。一緒に通
っていた親友の岳は、いつの間にか辞めて
しまった。その理由もまた分からない。

「せっかくの休みだってのに」

気乗りのしないまま、駅のホームで電車を
待っていると、向かいの小学校から「合唱」
が聞こえた。

♪夏が過ぎ 風あざみ 誰の憧れに さま
よう 青空に残された 私の心は夏模様♪

井上揚水の少年時代。懐かしいメロディと
透き通る歌声に、暁彦の心は軽くなった。

            ◇

暁彦はいつも通り、授業が始まる30分前に
教室に入ると、前回の授業の復習をしよう
とノートを開いた。だが、駅のホームで耳に
した「合唱」が頭から離れず集中できない。
今は、軽くなった心を、わざわざ重くするよ
うなことはしたくなかった。窓の外を見れば
木の緑や空の青、陽の光が眩しくて、遥か
遠くビルの向こう側をぼんやりと眺めている
のが心地良い。

いつの日からか、一つ一つの行動に「理由」
や「根拠」を求めていた暁彦は、そんな自分
に疲れ果てていた。

「理由なんかいらないか」

何をきっかけにそう思ったかは分からないけ
ど、暁彦の心はその日を境に夏模様。大丈
夫。その理由も、ずーっと後で分かる日が
来る。




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