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英会話スクールに向かう途中。暁彦の心は かげっていた。好きではじめたはずの英語 の勉強が、楽しくないのだ。それでも、なぜ 勉強を続けるのかが分からない。一緒に通 っていた親友の岳は、いつの間にか辞めて しまった。その理由もまた分からない。 「せっかくの休みだってのに」 気乗りのしないまま、駅のホームで電車を 待っていると、向かいの小学校から「合唱」 が聞こえた。 ♪夏が過ぎ 風あざみ 誰の憧れに さま よう 青空に残された 私の心は夏模様♪ 井上揚水の少年時代。懐かしいメロディと 透き通る歌声に、暁彦の心は軽くなった。 ◇ 暁彦はいつも通り、授業が始まる30分前に 教室に入ると、前回の授業の復習をしよう とノートを開いた。だが、駅のホームで耳に した「合唱」が頭から離れず集中できない。 今は、軽くなった心を、わざわざ重くするよ うなことはしたくなかった。窓の外を見れば 木の緑や空の青、陽の光が眩しくて、遥か 遠くビルの向こう側をぼんやりと眺めている のが心地良い。 いつの日からか、一つ一つの行動に「理由」 や「根拠」を求めていた暁彦は、そんな自分 に疲れ果てていた。 「理由なんかいらないか」 何をきっかけにそう思ったかは分からないけ ど、暁彦の心はその日を境に夏模様。大丈 夫。その理由も、ずーっと後で分かる日が 来る。
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