昼の12時。 甲子園をテレビで見ていたら、サイレンが流れた。 私は当然の様に目を閉じて、テレビと市内放送のサイレンを聴いていた。 サイレンが消えて、目を開いて、甲子園の続きを見る。 すると、一緒にテレビを見ていた弟が、私に言った。
「ねぇ、今日って何時に爆弾が落ちた日なの?」
…嗚呼。 何て悲しい世界なんだろう。 今日は終戦記念日だよ、と教えた私は、頭がグラグラした。 そんな事はお構いなしに、弟はテレビに釘付けになっていた。
弟は、決して馬鹿な子な訳ではない。 寧ろ勉学はどの教科でも私が驚く程の好成績を残している。 そんな子が。 原爆が落ちた日を。 戦争が終わった日を。 何も、何も知らないのだ。
せめてこの戦争の、最低限の事くらいは知っていて欲しかった。 でも、あの子は何も知らなかった。
最近の子は、皆そうなのだろうか。
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