コトバアソビ。
無断引用お断り。

2002年10月09日(水) 会社員→一人の男。


笑っていた。

凄く、自然に笑っていた。

女の子は、笑いながら俺に言った。


「オジサマ、夢、買わない?」


買う訳が無い。

今まで、どんな事があっても、

そんな誘いには応じた事が無い。

妻に義理立てて居る訳でもないが。

そうさ、仕事で忙しいと自室に篭って

もう何ヶ月もまともに顔すら見れていない妻になんか。

気がついたら少女の肌を撫でていた。

ふと、急に、我に帰る。

暗闇の向こうには、僅かなぬくもりしかなかった。

怖くなる。

社会人としての倫理とか、そんな事ではない。

言葉に出来ない恐怖が、俺を襲ったのだ。


「ねぇ、キミって、『アイ』信じる?」

「『アイ』だよ、『アイ』。『愛情』の『アイ』」


咄嗟を突いて出た言葉は、自分で思うにも間抜け過ぎた。

少しの間を置いて、少女は答えた。


「・・・信じて・・・ます。」


嘘だ。

直感でそう思った。

何だか、少し安心した。

全てを曝け出している訳ではない事がわかったからだ。

俺も、彼女も。


「そっか・・・。そう言う子もいるんだね、今時。」


もう、どうでもよかった。

何故、少女と一緒に居るのか。

その理由すらわからなかった。

ほんの少しだけ、生きている実感てヤツが

欲しかったのかもしれない。

行為後、横たわる少女の脇に、

そっと二万五千円を置いて立ち去った。

もう、彼女と会う事は無いだろうと思った。


決して、それは。


部屋の出掛けに視界の隅に映った彼女の制服が、

教師である妻の勤め先のものだと気付いたからではない。




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本田りんご

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