笑っていた。
凄く、自然に笑っていた。
女の子は、笑いながら俺に言った。
「オジサマ、夢、買わない?」
買う訳が無い。
今まで、どんな事があっても、
そんな誘いには応じた事が無い。
妻に義理立てて居る訳でもないが。
そうさ、仕事で忙しいと自室に篭って
もう何ヶ月もまともに顔すら見れていない妻になんか。
気がついたら少女の肌を撫でていた。
ふと、急に、我に帰る。
暗闇の向こうには、僅かなぬくもりしかなかった。
怖くなる。
社会人としての倫理とか、そんな事ではない。
言葉に出来ない恐怖が、俺を襲ったのだ。
「ねぇ、キミって、『アイ』信じる?」
「『アイ』だよ、『アイ』。『愛情』の『アイ』」
咄嗟を突いて出た言葉は、自分で思うにも間抜け過ぎた。
少しの間を置いて、少女は答えた。
「・・・信じて・・・ます。」
嘘だ。
直感でそう思った。
何だか、少し安心した。
全てを曝け出している訳ではない事がわかったからだ。
俺も、彼女も。
「そっか・・・。そう言う子もいるんだね、今時。」
もう、どうでもよかった。
何故、少女と一緒に居るのか。
その理由すらわからなかった。
ほんの少しだけ、生きている実感てヤツが
欲しかったのかもしれない。
行為後、横たわる少女の脇に、
そっと二万五千円を置いて立ち去った。
もう、彼女と会う事は無いだろうと思った。
決して、それは。
部屋の出掛けに視界の隅に映った彼女の制服が、
教師である妻の勤め先のものだと気付いたからではない。
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