チッチ、と壁でマッチを擦る。
ジッと音を立てて燃え立つ炎が消えないうちに、
肩を丸めてオレは煙草に火を点ける。
流れる雲と同じ速度で飛行し続ける艇の甲板で、
しばしの一服。
ふぃーと吐き出す煙が自分の後ろへと吸い込まれていった。
団の長ともなると、自分の時間なんてモンがありゃしねぇ。
オレに許された時間なんざ、せいぜいがこの煙草一本分。
嘘みたいに突き抜けた青空をぼーっと見上げる。
おまえさんもこうやって見上げたらいいのにな。
見てみろよ。
誰の上にも空は青いぜ。
誰も憎んじゃいねぇ、天は許してる。
ほんの少しでいいから、それに早く気付け。
祈るように息を吸い込んだら、最後の灰がはたりと落ちた。
おっと、もう仕舞いか。
・・・そう、少しでいいんだ。
おまえさんが、楽になると良い。
そう思いながら、吸殻を灰皿へと投げて。
・・・オレは日常へと戻った。
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