週末、我が家の辺りは人々が賑やかに行き交う。
何を考えているのか。 何を感じているのか。
行き交う人の多くが和やかな表情を見せてはいるが、 その実、心の中では何をどう思っているのか。
和やかな表情の裏側に修羅を抱えている人もいるのだろうか。
いるのだろう。きっと。
先日、丑三つ時と言っても良い時刻に 彼の人より電話があった。
電話など、もう5年ぶりであろうか。
既に寝入っていた私は「起きろ」というメールの 着信を知らせる振動音で起こされ、ぼんやりした頭のまま電話に出た。
酔っているのだろう。 こんな時間まで呑み歩いて。
けれど、いつものことだ。 が、いつもとは違う何かがあったから電話などしてきたのだろう。
元気にしているのか、ちゃんと食べているのか。 仕事にはきちんと行けているのか、と。
まるで親である。
ふとした沈黙の後、「SEXしような。」と言う。
寂しかったのだろうか。 あるいは、ただ性欲が高まっていただけのことだったのだろうか。
それとも私が寂しそうに見えたのだろうか。
見えるはずもないのに。
私はただ単純に、愛をもって抱き締めて欲しいだけなのに、 それは単純なことではなく、簡単なことでもないらしい。
確かに、SEXするだけの方が簡単ではある。 そんなことは百も承知だ。
けれど、それを繰り返しながら生きていくことは簡単なことではない。
少なくとも、私にとっては。
『SEXしなくて良いから、しっかり抱き締めていて欲しい』 と思いながら、「うん。そうだね。」と答えた私を貴方は知らない。
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