2002年05月14日(火) |
中国瀋陽の日本領事館事件 どちらの言い分が合理的か |
日経(H14.5.14付)・1面を始め、連日、中国瀋陽の日本領事館に北朝鮮の人たちが逃げ込んだ事件が報道されている。
この事件では、中国側武装警察官が領事館に立ち入ることを、日本側が同意したかどうかが問題になっており、中国側は、同意を得ていると発表し、同意していないという日本側と真っ向から対立している。
もし、日本領事館側が、中国に対し、無断立ち入りしたことを理由に損害賠償請求したら、裁判所はどのような判断をするだろうか。
仮定での話であるが、それを通じて、裁判所の事実認定の手法を参考にしていただけたらと思う。
以下検討すると、
ビデオを見ると、武装警官は、敷地内に数歩入って、亡命者を押し出した場面もあるが、基本的には、敷地外から引っ張り出そうとしている。 すなわち、本来、敷地内に入れないことを十分認識していることが伺われる。
そのような姿勢を見せている武装警察官が、むりやり同意もなく、正面の門の少し奥にある待合所まで入って、亡命者たちを強制的に連行するということは考えられないのである。
また、領事館員は、武装警官の防止を拾うなど和やかな雰囲気がみられる。 その意味からも、武装警官が強引に敷地内には行っていくことは考えられない。
さらに、日本領事館は報告は、当初は、領事館員は誰も立ち会っていないと報告するなど、報告がころころ変わっている。
そのような一貫性のない報告は、信用できないと評価される。
このような諸事情を考えると、裁判所がよく使う言い回しをすれば、「日本側の主張は、不自然かつ不合理である。」という判断になろう。
むしろ、武装警官は、敷地内に入ることを日本側に告げ、それに対し、日本側はとくに何も言わなかったと考えるのが自然である。
この場合、裁判では、「明示の同意はないが、黙示の同意があった」という言い方がされる。
つまり、同意する言葉を発しなくても、そのときの態度等の様々な事実から、同意があったとみなすわけである。
以上のとおり、日本側の主張は、証拠に照らして不自然・不合理であり、中国側の主張の方がむしろ自然であると思われるのである。 (私は、親中国ではない。念のため。)
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