| 2013年10月18日(金) |
「名張毒ぶどう酒事件」について |
日経(H25.10.1)社会面で、三重県名張市で1961年、女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」の第7次再審請求で、最高裁が、奥西勝死刑囚の再審請求を退けたが、それを受けて、弁護団は「信じられない思い」と怒りをあらわにし、第8次再審請求を申し立てる方針という記事が載っていた。
再審請求では、犯行に使われたぶどう酒の残留毒物が、奥西死刑囚が自白した農薬「ニッカリンT」と一致するかが争点であった。
弁護側は、「ニッカリンT」からは特有の副生成物が検出されるが、事件当時の鑑定でこの副生成物は検出されておらず、「毒物は別の薬で、自白は強制されたもので虚偽」と主張していた。
これに対し、名古屋高裁は、再鑑定を行い、それによれば、ニッカリンTの場合でも、抽出の手法などによっては副生成物が検出されない可能性があるとの結果になった。
そのため、名古屋高裁は「ニッカリンTを使った」とする奥西死刑囚の自白内容と、副生成物が検出されなかった当時の鑑定結果に矛盾はないと判断して、再審請求を退けており、最高裁はその判断を支持したものである。
この事件は、一審では無罪判決が言い渡されているように、奥西死刑囚が間違いなく犯人であるという証拠は乏しい。
そのため、日弁連も再審請求を支援している。
しかし、再審請求では、事件全体を見直すのではなく、「無罪等を認めるべき明らかな証拠が新たに発見された」かどうかが審理されるだけである。
すなわち、この事件でいえば、「ニッカリンT」からは特有の副生成物が検出されないことがあるかが最大のポイントになったのでである。
その結果、再鑑定において、「ニッカリンTの場合でも、抽出の手法などによっては副生成物が検出されない可能性がある」とされたのである。
そうすると、その再鑑定が正しいことを前提とする限りは、再審請求が棄却となってもやむを得ないということになりそうである。
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