先生妄想日記

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2004年01月29日(木)    ありがとうとおめでとうを君たちに

先生、俺ら、もう地元に帰るから。
卒業まで学校来ないから。
多分もう会えないけど。
今までありがとう。
俺らも頑張るで、先生も頑張ってね。

推薦ももう決まって、あとは卒業するばっかりの、スポーツ科みたいのの寮生たちが挨拶に来てくれた。

「なんで?寮もう出るの?」
「うん」
「そうか……」
「先生、淋しいでしょ!」
「淋しい」
「わはは、嘘つけ!」
「本当。すごくすごく淋しいよ。でも今までありがとう」
「………うん、って、素?」
「うん、素だよ。心底素だよ。淋しい」

言ったら泣けてきました。しかも一度泣いたら止まらなくて号泣です。
生徒びっくりです。

そりゃびっくりだよね。
顧問でも監督でもない、時折スポーツドリンクや茶や差し入れを置きに行っただけの、大した接点もないような女が、突然号泣。
でも、君たちにとって私は、大して存在感のない先生だったかもしれないけど、私にとって君たちは、とても大きな存在でした。


私は。
君たちの、自信から来る横着な所にとてもイライラしていました。
君たちの教室の前を通ると、心底臭くて、夏なんて鼻つままないと通れないくらいでした。
私は一応女なんですけど、にも関わらず平気で廊下で着替えている君たちの、汚いケツも見飽きました。
自分の住んでいる県が、日本のどの位置にあるのかさえ知らないのには驚きました。
パンツも洗濯し飽きました。
私に対する横柄な言葉も聞き飽きました。
下ネタも、もう十分です。

私は。
君たち、スポーツ科みたいのの子たちが、大好きでした。
とても男の子になりたいと思いました。
君たちの仲間になれたら、きっと心底楽しいだろうと思いました。
あんなに、損得とか恋愛とか打算とか関係なく、純粋に懐いてくれたのは、君たちが初めてです。
私は、君たちが大好きでした。
だから、君たちがいなくなるのは、本当に淋しい。
切実に淋しい。

修学旅行も遠足も練習や試合、1年間を通して、休みは盆と正月、夏休みの1週間だけ。
テスト前ももちろん練習、男子高で男子寮、3年間坊主頭、推薦が決まっても、怪我をすると駄目だから免許も取れない、何もかも、学生生活のほとんどを犠牲にして。
何度も何度も、そのスポーツを続ける為に手術を繰り返す子も。
「俺はこれしかねーから」
その言葉の意味する事が、どれだけ大変な事が、こんな中途半端な私にはわかりません。
端から見てるみたいに美しい事ばっかじゃないかもしれない。
楽しいフリをしてるだけだったのかもしれない。
それでも、練習や試合をする時の、君たちの顔がとても好きです。
君たちの、その犠牲が、ちゃんと報われる事を、本当に、心底願っています。
いつか、君たちを、オリンピックやワールドカップや世界大会の中継で、テレビの中に見れる事を楽しみにしています。



私は卒業式に出ないから、先に言っておくね。


本当にありがとう。


卒業、おめでとう。



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