しあわせのかけら。
小さな子どもの頃、拾ったビー玉やもみじの葉っぱ、キャンディーの包み紙やグリコのおまけ・・・いろんなものをとっておきたくて“秘密の箱”に入れてたっけ。そんな日記、かな?

2008年11月27日(木)  冬の空。

さすがに今日は
暖かそうなジャケットを着て来たあの人。
鼻もすすってない。
夢枕▲の本は読み終わったらしく
多分何か別の本を読んでいる。


くっきりと青い冬の空。
住宅やビルの隙間という隙間を
折り紙みたいに均一な空色が埋めている。


iPodから聞こえる
一途でせつない歌。

教えてくれた人に
お礼が言いたくなって
左右合わせて3本指でメールを打つ。
(少しだけど速く打てるから。笑)
それでもちょっと考えながら打っていたので
思ったより時間がかかってしまった。

送信し終わって顔を上げると、
私とあの人の間に
きれいな女性が立っていた。

ああ。見えなくなっちゃった。

ちょっと、横にずれてくれないかなあ。
そう思いながら彼女の顔を見上げて、
ああ、ほんとにきれいな人だなあと思った。
雑誌のモデルさんにいたよねえこんな人。

きれいだな〜と見とれながらも
邪魔なのよ〜と恨めしく思う。
そんな矛盾が
なんとなく可笑しくて、
見えないけどまあいいか。
と思った。


まあいいか。

そう思った途端、
糸が切れてしまう。

降りる駅。
電車が停まる前に
いつの間にか立ち上がっていたあの人は、
私が見た時にはもうドアのところまで進んでいて
ドアが開くとあっという間に遠ざかっていった。

私があの人のところまで糸を伸ばしていないと、
すぐ人ごみに紛れてしまうんだ。
すぐ見えなくなってしまうんだ。

まったく一方的な糸。

iPodからは
私とは無関係のせつない歌が聞こえてくる。

伸びた糸は
行き場を失って
冬の青空をふわふわと戻って来て
私の頭の上で揺れているような気がした。


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