はるもにあ...Hako

 

 

ダークサイド - 2000年09月25日(月)

あたしが用紙を差し出すとその人は「まだ動いてるの?」と言った。
“進路先未定“の届。
「動くんなら動かないと」
「そういう仕事につきたいのなら、進学するしかないね」
そういう仕事に、つきたいのなら。

就職するんなら、地元でいいと思っている。
あたしにとって就職は夢でもなんでもなくって、必要の上にあるもので。
少なくとも今、このまま就職するとしたらね?
都内に通ったからといって夢を見られるとは思えないし、
都内に通うことに付随するあれこれに魅力を感じたりはしないのだった。

空の狭い街。
見上げる気すら起きない場所で、
満員電車に耐え、人ごみの中、急ぎ足で歩く。
人を思いやる余裕すらなく、ただひたすら感覚を殺して過ぎるのを待つ。

そんな風に思っていた、大学時代。
今はまぁ、それほど悪くはないと思えるようにはなったけれど、
いいとも思えないね。

ここで自由に笑い、生きられるようにはなれなかった。
行こうと思えば行けるキョリ。あたしにはそれで充分だ。
あたしは広い空が好きだし、昼間の太陽が好きだし、
何もない時間が好きだ。

就職するとしたら恐らく、何かすごいものに出会うのでもなければ、
あたしの世界は仕事以外のものを中心にまわっていくだろう。
少なくともそうしたいと願うだろう。
そして、それらのこととあたしの生活を維持するために、
働こうと思うだろう。

そんなあたしに、都内に通うことは全く魅力がないんである。
あるとすればいろんな芸術が集まってることくらいかな・・・。
こんなあたしのありかたは、なんか腐っているかしら?
あるかもしれない可能性すら、つぶしてしまっているかしら?

あたしの将来が楽しみだと言った人がいた。
あたしはすごくなるんだ、ならなきゃいけないと思っていた。
お前のような奴はすごい奴になるか、
どうしようもなくダメな奴になるかどちらかだな、と言った人がいた。
抱えているものを形にできればよし、
できなければそれにつぶされていくんだと。

暗いトンネルを抜けてつかまえた光を大事にして生きたいと思った。
“生きること”を楽しみたいと思った。
穏やかに時が流れて、生活の当たり前を楽しんで、
そんな風に生きられたらいいと思った。
大学へ進学することにも熱心になれなかったよ。今と同じだね?

行かなくてもいいと思うといったあたしを否定した人がいた。
あたしには何もなかったのにね?
あたしにはきっと、何かがあったんじゃなくて、何かがなかったんだ。
そう思う。

ありとあらゆる選択肢があたしの前に横たわっているなどと、
いつから思っていたのだろう。
将来何になりたいの?
いつもあたしを苦しめたこの問い。
絶えず降り注いだ、望みさえすれば、努力さえすれば、
なんだってできるというメッセージ。
あたしはいつまでたっても、どこまで行っても、
何も成し遂げられずに、何にも満足することができずに、
空しさだけを抱えていた。


...



 

 

 

 

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