- 2000年10月29日(日) もう、目を開けてはくれなかった。 力なく開いた口から、ゆっくりと、しかし不規則に息の音が聞こえる。 「穏やかな顔をしている」とみんながいう。 ・・・そうだろうか? モルヒネを使って痛みを抑えた結果、幻覚が見えるようになって 安定剤を使ったからもう、ほとんど眠ったままなんだって。 もう目を開けてはくれなかった。 穏やかな顔をしていてよかったと、みんながいう。 確かにまだそこにいのちはあったのだけど、なんて消え入りそうに儚い 触れたら壊してしまいそうで、あたしはただ立ちすくんでいただけだった。 あたたかさを感じてきたかった。手に、頬に触れて。 あたしはただ、立ちすくんでいただけだった。 痛みに顔を歪め、幻覚におびえながら、死んでいく? それとも眠るように。眠らされたまま。 ・・・いつか、「終わる」。確実に。永遠に。 すべての過去がひとつになって、すべての答えが訪れるとき。 「物語」の最後のページを、あたしは思った。 ...
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