ToY◎StorY
モクジ|カコ|ミライ
あつくんに
「彼のことは、本当に好きじゃなかったのかもしれない。
彼にはなにかしてあげたいとかそういうことは思わなくて
ただ、ただ、尊敬の念がそこにあったから」
とぽつりと海外勤務の彼の話しをした時
「好きのカタチはいろいろやねんから、
好きじゃなかったってことはないと思う。
それでいいと思うねんな」
とあつくんは言った。
彼のことを思い出すと
手をつなぎたいのも
キスをしたいのも
体の関係をもちたいのも
未来を築きたいのも
あんなに恋い焦がれたのも
彼だったことに気づいてしまうから
わたしは無意識にふたをしていた。
あつくんじゃなくて
れいちゃんでもなくて
わたしは
わたしは
彼のこと、
ちっとも忘れられてやしない。
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