昼下がりの中途半端に人の少ない電車に、 がたんごとんとゆられていった。 ひさしぶりのグレーのスーツに白いシャツ。 なるべく普通にみえるように、 まっとうな社会人にみえるように。 派遣登録をするのにはベストな服装なんて、 そんなにおもしろいもんじゃない。
2年前までは毎日のように乗っていた電車。 あの頃とかわらず 線路沿いにはやわらかそうな緑の絨毯。 ところどころにたんぽぽ。 赤錆色の鉄橋、 緑の川面にただよううす桃色の花びら、 桜は両岸に惜しげもなく咲き誇る。
大きなビル。 書類を書くのが遅い私。 面接はなぜかいつもなごやか。 エレベータホールは銀色でつるつるしていた。
電車に乗って家に帰った。 夕方がやってきていた。 前の会社に勤めてた頃は、 こんな明るいうちに電車に乗るなんて考えることもできなかった。
緊張して、つかれたよ。 次の仕事に慣れるまで、 こんな日々が続くのかな。
がたん。ごとん。
いっぱい考えたよ。 私なりに考えたよ。
春の土手で、 やわらかく放り投げたボールのように、 受け止めてもらえたらうれしいな。
今日最後の電車が鉄橋を渡る音が聞こえる。
なにがあるわけでもないのに、 明日が待ち遠しい。
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