本当に、 失ってしまってはじめて知る。 そのいとおしさ。 どうしても、 なにがなんでも手に入れたくなったとき、 絶対に、 声すらも掛けられないほど遠くに、 それはいる。 かけがえなく、耀いて、 何もさえぎることができないのに、 手を差し伸べることすらできない。
そうわかっていて、 またひとつ、 私は大切なものを失おうとしている。 手を、 伸ばせば届くかもしれない、けれど、 実は、 ずっと手をつないでいるつもりだったのは、 私だけだったらしい。
いつでも、 仲間じゃなかったらしい。 手なんか、つないでなかったらしい。
つよいとか、 やさしいとか、 私にはわからなくなった。
わからなくなった。
遠くなった。
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