初日 最新 目次 MAIL HOME


りょうちんのひとりごと
りょうちん
MAIL
HOME

My追加

2010年05月30日(日)
Vol.762 母の還暦

おはようございます。りょうちんです。

近くの紳士服専門店で、礼服を購入した。礼服をすぐに着る予定なんて今のところないのだが、この歳になれば突然そういった状況になることもあるかもしれない。そんな話を母にすると、必要ないものは必要になった時に手に入れればいいんだと言う。以前、香典袋をまとめ買いしたら、立て続けに不幸の連絡が入ったことがあったそうで、それからは香典袋は毎回ひとつずつ買うようにしているんだそうだ。だから使う予定もない礼服を購入したら、近いうちに使うことになってしまうかもしれないと心配したのかもしれない。ひょっとしたら、自分のために。
桜が咲いた頃から、母の体調がどうも思わしくない。食欲がなく、カラダのむくみも取れないようで、顔色もなんとなく良くない。春から変えた薬があまり合わないせいだと母は言っていたが、それだけではない気がする。母は今月半ば、誕生日を迎えた。満60歳。還暦である。父の時と同様、母の還暦祝いなんて特別に何もしなかったが。病に倒れた時は還暦を迎えられるなんて母は思っていなかったようで、実は秘かに60歳の誕生日が来ることを待ち望んでいたようだ。誕生日の朝に「新しい礼服は当分着る必要ないよ!」なんてうれしそうなメールが届いて、最近は体調も落ち着いたのかななんて俺もちょっと安心していたのだが。
おととい、母が入院した。還暦祝いに何もしなかった代わりでもないが、新しいパジャマを母にプレゼントした。さっそくお見舞いに行くと、そのパジャマを着ている母が笑顔で俺を出迎えてくれた。ちょっと丈は長いが、母の好きなピンク色がよく似合う。家にいた時よりも全然元気そうで、1ヵ月ほどで退院できるとのこと。いろいろと心配していた俺も、内心ほっとした。母は3年振りの病室で相変わらず看護師さんと楽しそうに話をしていたが、でも来月に予定してた家族旅行が延期になってしまったことが残念で仕方ないと思っているに違いない。
母のために、俺の礼服はまだ着たくない。ピンク色のパジャマも、本当は家で着ている方が母には似合っている。でも母なら大丈夫、還暦を迎えた母が次にめざしているのは、あと10年先の古希なのだから。