猫の足跡
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『大正時代の身の上相談』(カタログハウス編 ちくま文庫)
いやあ、身につまされつつ、ちょっと笑ってしまって、ついでに人様の悩みを盗み見るような気がして自己嫌悪。非常に面白かったことは事実ですが。 大正時代の読売新聞からおもしろい内容の身の上相談を抜粋しただけの、ある意味「下世話な」内容のこの本、いつの時代も変わらぬ人間観察と、暇つぶしにお勧めです。
そもそも、私は新聞の『身の上相談』コーナーがとても苦手です。ついでにいえば投書欄も…。書いている人の真剣さと読者の温度差が感じられて…。おまけにたいてい書いている素人さんは「イタイ」ので。 その真剣さが、私をいたたまれなくさせるのです。真剣なものを馬鹿にしてしまう自分を嫌悪して…。
で、やっぱりその意味では大正時代も全く同じでありました。いや、きっと人類が人類である以上、原始から皆それなりの悩みを抱え、誰かに聞いてもらっていたのは間違いないでしょう。平安時代の「蜻蛉日記」なんて読むとまさにそんな感じですもん。そして、その悩みがたいていにおいて「イタイ」ことも。
ただ、現代でも通用する悩みと、完全に過去の遺物と化した悩みがあって、その落差が非常におもしろく、笑えたのは事実です。
「接吻されて汚れた私」…“それゆえ一生独身で送ろうと思いますがいかがでしょうか”という相談内容に絶句。(「妻が処女でなかった!」って相談もいくつかありました。「清い交際」という言葉がそこかしこに使われているのも時代を感じて、“あ〜大正時代に生まれなくて良かった”と思った次第です)
「文学の道をあきらめられず」…“日本には文学で飯を食う人が多くて困ります”と突然言い切ってしまう回答者に爆笑。
「独身の職業婦人として成功したが時として何となしに一種の暗愁に駆られる」…何とまあ!時代を超えて独身キャリアウーマンの悩みってあるのね。
「ミカンを20個一度に食べる夫」…“ミカンのほかにリンゴなども食べるようにお勧めなさい”といたって真面目?な回答者に同情。
その他、人様の悩みで笑ってよいものやら、わかりませんが、一度お目通しあれ。
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