▼0:13(はみ出た) 「ヨコ。」 呼ばれて振り返った横山は、何だかほっとした顔をした。 「今は…ヒナか」 「うん。今は部屋に引っ込んでるみたいや。疲れて寝とるんかな?物音せぇへんし」 「そぅか」 「うん」 それだけで一瞬止まった会話に、横山が「何や?」と続きを促す。何かを言いたくて自分に声を掛けたんだろう、と。 「ぅん…ヨコ、ありがとぅな」 「何がや」 「何や色々迷惑かけてもぅて」 「…そんなん、」 それは自分だけではない、メンバーみんなが同じ筈で。謝るなら他のメンバーにもだし、そもそもメンバー内で迷惑だとか、面倒だとか、それすらが馬鹿げていると横山は思った。それこそが今更、水臭い。 「でも、アントーニオが初めに声を掛けたのがヨコやったやろ?一番驚いたんちゃうかなー思って」 「まぁそら、驚いたけど」 確かにあの時、村上の顔をしながら村上ではない雰囲気を持ったアントーニオに、一瞬でも背筋が寒くなったのは確かだった。目の前にいる村上が自分の知っている村上でなければ、これは一体誰なんだろうと。人格が入れ替わっていたのだと分かった今でこそ素直に理解も出来るけれど、それに気付かなければどうなっていただろうと思う。なまじ見た目が村上のままなだけに、捉えどころのない、複雑な気持ち。違うものの入った、村上の入れ物。 だから今、横山は、村上が「ヨコ」と呼ぶ声を何だか懐かしく思う。 アセンズの時代、二文字の名前は殆どなかったらしい。愛称ではあるのだけれど、「ヨコ」と呼ぶ事に慣れなかったアントーニオは結局「ヨコヤマ」と呼んだ。(だから「マルヤマ」なのだがこちらは誤解が解けた今でも「シートン」と多々呼ばれる。渋谷は「スバル」でOKらしい。ちなみに安田はここぞとばかりに「ショウタ」と呼ばせていた。それに倣った大倉も「タッチョン」と呼ばれているらしい…が、「たっちょん」の発音が難しくてアントーニオは大倉をあまり呼ばなくなったとか。そういえば錦戸は面倒だからと「直樹」のままだった) 村上の声なのだけれど村上の質感ではない、そんな声で聞き慣れない「ヨコヤマ」と呼ばれる事に、違和感を感じていたのかもしれない。もしかすると違和感よりもっと感傷的な、…寂しさ、とか。 村上の姿をした村上が、村上でない事。何か舞台の続きを見ているような。迫真の演技をする村上が、演技を止めなかったらこんな風になるのだろうか、と横山は思った。考えてみればそれは恐怖には違いなくて。だから今、村上の中身が戻って来た事に感謝する。思いのほか安堵している自分に気が付いた。 「ヨコ?」 それきり黙り込んだ横山に、困惑気味の村上の声が聞こえる。ヨコ、と呼ばれるたびにその思いは膨らんで、とうとう横山は、村上の手を引いた。勢いのまま、その体を手の中に抱き込む。 「…どないしたん」 「どうもせぇへん」 そう、どうもしない。ここに村上がある限り。変わるものはないのだと、横山は思った。 思いのほか、映画の印象を引き摺った模様…(しかも主旨変わってますがな) 大体これもう穴穴とか関係ないし!とは思えど、だって記憶が忘却の彼方だから、今の時点で書ける気がしないんだもん…色んな意味でまだ手の中に落ちてこないので、妄想が固まりません。なのでしばらくは二重人格で遊ぼうと思います(笑) ていうか…!(今恐ろしい事に気が付いた) 猿知恵見逃した…………(ズーン)
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