私の中で密かにブームをおこしている、乙一氏。やっぱり凄いです。 ホラーかと思いきや、伏線がガンガン張られたミステリ、しかもこの淡々とした文章。癖になります。 この本は、「A MASKED BALL 及びトイレのタバコさんの出現と消失」と、表題作「天帝妖狐」が収録。「A MASKED BALL」は学校のトイレの落書きに始まる事件、「天帝妖狐」素顔を見せない青年・夜木と杏子の交流を描いている。 淡々としているから怖い。なのに、その怖さが哀しくもあったり…。 「A MASKED BALL」、短編も含めた乙一氏の作品の中で、裏ナンバ1かもしれません。 「ラクガキスルベカラズ」というトイレの落書き。自己矛盾なこの落書きから始まる、お互いを知らない五人のトイレ利用者のやりとり。 トイレの落書きというお互いの落書きを書き込むタイムラグ、匿名性が高いことを利用した話題・お互いへの意見。なんだかオンラインの掲示板のような感じ。それよりちょっとレトロで、アナログですが。 結局、"K.E."と"2C金髪"くん××で、"V3"って○○で、カタカナのあいつはあの人だったってことですよね。
私は永遠の命を願い、家族を悲しませ、人を傷つけた愚かな子供でありました。(略) もし私が人間であったなら、ずっとあなたのそばにいたかった。さようなら、ありがとう、私に触れてくれた人。(「天帝妖狐」)
乙一:天帝妖狐,p.242,集英社.
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