月のシズク
mamico



 過去の断片

入学式のシーズンです。
知り合いの女の子が大学の入学式に参加しました、というメールをいただいた。

「入学式」という言葉が、奥底に沈んでいた記憶を呼び戻す。
私が大学に入学したとき、当時同居していた4つ違いの兄が保護者として
同伴してくれた。ふたりして正門をくぐり、桜並木のアーチを入学式会場へ
向かって歩いてゆくと、両側からちょっと強引なサークルの勧誘を受けた。
両手にはみるみるチラシが積まれてゆく。

ふと隣りを見ると、兄の手にもチラシがどんどん押し込まれてゆく。
「やっぱり」とふたりしてにやにや笑う。
「オレもまだまだいけるよなー」と嬉しそうに兄が言っていたのを思い出す。

あの頃、兄妹で三鷹のマンションに住んでいた頃、
まだ未来がとても素敵なものに思えた。

可能性はどこまでも深く続いていて、過去は遠くへ破棄したつもりでいた。
でも、今ならちゃんとわかる。
時間と記憶は甘美で残酷な代物だということを。




2001年04月04日(水)
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