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■ みちくさ
会社を休んでしまいました。まぁ、その、体調不良というやつです。 昼過ぎまで死んだように眠って目覚めたら、冷蔵庫の中が空っぽ。 薬を飲んで吉祥寺まで食料の買い出しに行って来ました。
鎮痛剤のせいで頭がぼーっとしていたらしく、手当たり次第 ぽんぽんとカゴに放り込んでゆく。甘エビのお刺身が食べたい! と生鮮食品コーナーへ行ったら、マグロもうまそやね、とカゴの中へ。 気が付くとカートは食べ物でいっぱい。レジでお会計を済ませてから、 ひとり苦笑してしまった。こんなにたくさん、どうやって持ち帰るねん。 それよか食べる前に腐らせそやわ。
透明なビニール袋に慎重に詰め込み、よいしょと持ち上げる。 あまりの重さにふらり、と足元が揺れる。 エスカレータを上がって蒸し暑い外に出ると、夏の日の祖母を思いだした。
祖母が買い物に出ると、3回に一度くらいはその30分後に電話がかかってきた。 「まみこさん、ちょっとよろしいかしら。お荷物が重くって」 私が彼女を迎えにいくと、彼女はスーパーの出口の日陰のところで、 ライムグリーンの日傘を差して待っていた。私が両手に袋を持ち、 彼女は片手に日傘、片手に軽めの袋を持ってしゃんしゃんと歩き始める。 どんなに暑い日でもお着物を着て(浴衣のことも多かった)、背筋を ぴんと伸ばして歩く。高く結い上げたうなじに白い粉がはたかれていて、 こんなに暑いのに汗ひとつかかない。
「ねぇ、どうしていつもこんなにたくさん買い込むの?」と私は彼女の 帯あたりを見つめながら聞く。「だってお刺身、好きでしょ?スイカも おいしそうに冷えていたし。思わず、ねぇ」と笑う。
夏の日差しが、頭のてっぺんに突き刺してくる。 私は汗をだらだらとかきながら歩く。 祖母が歩みを止めて、私にも日傘をさしかけてくれる。 しょうがないなぁ、と思いつつも、私はこうして祖母とふたりで歩くのが好きだった。
・・・ったく、重いってば。 電話したらすっ飛んできてくれるような人、いないかしら、ねぇ。
2001年06月07日(木)
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