月のシズク
mamico



 バララッドという町

それはどうやら「街」ではなくて「町」なのだそうだ。
メルボルンから110キロ離れ、昔ゴールドラッシュで栄えたその町には、
日本人がひとりもいないそうな。「今にも羽根が生えて、何処かへバサバサと
飛んでいってしまいそうな名前の町(笑)」と本人がメールしてきた。

世界各国を旅しても中国人はどこにでもいる、という話はよく聞く。
彼らはとてもエネルギッシュで、生きるための遺伝子が脈々と受け継がれて
いるようだ。確かに、どんなに小さな田舎町にも、チャイニーズレストランは
必ずある。彼らはそこでちゃんと暮らしている。
滞在ではなく「暮らし」を根付かせるのがじょうずな人々だ。

でも日本人が寄り集まる町はそんなにない。
ひとりで行動するのが苦手な習性があるのに、外国では不思議とそっぽを
向き合う日本人にこれまで何人も出会った。

でも、彼は違うとおもう。
太陽のような大きな笑顔(その笑顔に私は何度も救われた)で、
人をどんどん受け入れてゆく。私の知っている彼は、嘘をつくのが下手で、
人を笑わせるのがとても上手な人だった。そんな友がバララッドという
小さな町で、いちばん最初の日本人になるらしい。

大きなバックパックをしょって、腕を広げ、
次々と町の人たちとハグを交わしている姿が眼にうかんだ。




2001年10月12日(金)
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