 |
 |
■■■
■■
■ 茶色のスリッポン
ショートカッツをするつもりで足早に入ったデパートを、 10分後、私は靴の入った袋を手に出てきてしまった。 近道が寄り道になってしまった。
最近の東京は暑い。4月が始まったばかりだというのに夏日だそうだ。 うすっぺらなピラピラのブラウス一枚で、チクチクと紫外線に突き刺されながら、 スゥエード地の黒いミュールがいかにも重たい。と、足元を見下ろした昼どき。
デパートの1Fの靴売り場には、オモチャのように色とりどりの瀟洒なヒールが並ぶ。 女性の足は美の追究のため、身体の中で最も虐めらる場所かもしれない。 全身のツボが足の裏に集中している、というのに。
ちょこんと鎮座していたレンガ色のスリッポンは、 ウシの一枚皮で造られており、滑り止めが踵までせり上がっている。 疲弊した夕方の足を突っ込むと、柔らかな皮がそっと足をくるむ。 おお、アタシのあんよがほっとしてるじゃないか。 ・・・という理由で、そのままレジへ。チャリン。
もしかして、この早すぎる初夏の陽気に踊らされたか?
2002年04月03日(水)
|
|
 |