月のシズク
mamico



 View from the Window

いちにち、大きな窓のある東側の部屋にいた。
外は相変わらずびゅーびゅーと風が吹き荒れていて、
上空に低く、おびただしい数の雲が流されていた。

白く厚ぼったい雲が、背後に控える青空をときどき垣間見せた。
この雲のさらに高い場所には、いつも青い空が控えているのか、と詩人のように思う。
夕方には、スポイトで赤紫の粒を一滴落としたような色に染まる。
そのすぐ後には、空全体が低く群青色がかったグレーに包まれる。
そして、どの瞬間にも、雲は速度を落とすことなく南から北へ流されていた。

ああ、この光景を知っている、と感じたは、街に灯りが灯る頃だった。
飛行機の頑丈な二重ガラスのあの小窓。そこから眺めた雲の形相。
夜には雲の切れ間から、下界の灯りがちらちらと見えた。
デ・ジャ・ヴュ(わたしはすでにそれを見ている)

あんまり雲が速いスピードで流れてゆくので、
私が空の上を流されているのかと錯覚した。
しかし、雲というものは変幻自在で羨ましい。
ありすぎるということはなく、条件が整うと、消えてなくなる。



2002年04月17日(水)
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