月のシズク
mamico



 雨上がり

昨日から降り続いていた雨が明け方頃にあがった。
午前中はどんより曇っていたけれど、午後になると5月の強い日差しが戻る。
しめっぽく濡れた土や木々が、とたんに艶めかしく色めき立つ。

今日はアシスタントの仕事もなかったので、夕方の早い時間にフリーになった。
建物の外(4F)に出て、なまぬるい空気に顔をしかめながら煙草に火をつける。
「おねーさん、やめたんじゃなかったっけ?」と隣りでうまそうに煙を吐く友に
「節煙してるだけよ」と苦し紛れに言ってみる。もちろん嘘じゃない。

立て続けに何本か電波が入り、ポケットを揺らす。
非常階段から身を乗り出し下界を見下ろすと、眼に見えない幾筋もの電波が、
大勢の人を次から次へと捕獲している。逃れられぬ獲物たち、と声に出して言ってみた。

こんなに美しい夕暮れだというのに、空を仰ぐものがいない。
その小さなスクリーンの中に、夕焼けは見えるかい?



2002年05月08日(水)
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