月のシズク
mamico



 12 water stories magazine

「ウォーター・マガジンは季節を言葉に変えた雑誌です。
 普段の生活の中で感じたり、見つけた事柄などを題材にした
 透明な12のストーリーといくつかの繊細な文章が詰まっています。
 春の光や風の中で読むと、言葉が舞って、青空に溶け込むように
 新しい季節の匂いに包まれていきます。」

                  (ウォーター・マガジンNo.3 2000年春号より)

季節誌で創刊は1999年の秋号からだったと思う。
2001年の秋号(vol.9)で休刊になってしまったが、私はこの小冊子が好きだった。
美術作家の永井宏氏が中心となり、サンライト・ラボという小さな編集部で制作していた。
B5サイズを一回り小さくしたハンディな冊子で、値段も530円とお手頃だった。
それに、なによりもコンテンツの12個の作品(エッセイ、詩、日記、ルポ)が、
洗練されきっておらず、生活感にあふれ、それでいて少し孤独な感じが良かった。
脱力しきった表紙絵や、外国雑誌のような紙質の悪さも好きだった。

わたしはこの冊子をよく旅先に持っていった。
新幹線で、空港のロビーで、ホテルのベランダで、プールサイドで、
私はすがすがしい気持ちで、果汁たっぷりのフルーツを食べるように、
これらの作品をむさぼった。肌をつややかにするビタミンのような効果を持って
いたと思う。今でも各号のページを開くと、たちまち旅した場所の匂いや
肌感覚がよみがえってきてしまう。なんというか、とても思い出深い冊子だった。

生活サイクルの一部となっていた、愛すべき季節刊行物を、とても懐かしく思う。
紙媒体の出版物がWebマガジンに敗退してゆく昨今だが、あの「一緒に旅した」
親密さというのは、まだまだモニタの上のドットには抱けない、と感じている。



2002年05月09日(木)
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