月のシズク
mamico



 オリオン

東京の夜空はあかるい。
星を探そうとしてもよほど澄んだ空でないと、
視力の弱いわたしにはぜんぜん探し出せない。

夜遅くなると広いキャンパス内の灯が消えるので、ベランダへ出て空をみる。
東の空に、オリオン座がうすい光を放っていた。遠くに朱色の東京タワー。
いくら眼を凝らしても、星座に疎い私には、それ以上のものは探し出せない。

まだまだ宇宙には、名のない星々がまたたいているはずだ。
それでも、その微光は此処には届かない。
わたしはそれを掴まえることができない。

いつか、長野の山奥で見た夜空を思い出す。
信じられないくらいの星が漆黒の空を覆っていた。
足元がふらふらとおぼつかなくなるほど、見上げていた、あの空。

不意にこの土地を離れたくなった。
夜空ノムコウへ渡ってしまおうか。


2002年10月11日(金)
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