ここ数年来あるアレルギーに悩んでいる。 嫁入り前の(多少董が立ってはいるが)娘の両手両足にある色素沈着。 食生活が乱れたり、湿気で蒸れたりすると内側から痒みがくる。 塗り薬をつければすぐ落ち着くのだが、厄介な事この上ない。
この、おそらく一生の付き合いになる体内の居候に出会ったのは真夏のモロッコだった。 留学生活の締めくくりに、と、父親と出かけた欧州旅行の時の事である。 ゲージツ家であるコージ苑の父は、その旅のテーマを「水と宗教」においた(らしい)。 まず砂漠のオアシスから始まり、西欧の宮殿にある噴水まで続く道筋を辿る。 同時にイスラムとスラブ、ラテンゲルマンアングロサクソンの文化の伝播をみたい。 この何とも壮大なテーマを抱えた父の尻馬にコージ苑は乗った。
そして向かったモロッコでは、ランドローバーに乗ってサハラ砂漠のオアシスで3日を過ごした。 そこでは360度砂漠という風景の中での夜明けを見た。 また、人間あんまり暑くなると寝るしかないということも体験した。 世の中には45℃で「涼しい」という言葉を使う人々がいるということも知った。 あまりに自分の世界と違いすぎる。 それはイギリスで感じたカルチャーショックなんて吹っ飛ぶようなものだった。
そして帰国後、父と私は自分達の体に化膿した虫刺されの痕を発見した。 生来皮膚が弱いコージ苑の方が症状がひどく、皮膚科で診てもらったところ、 「モロッコのダニ」が引き金になっておこったアレルギーだと言われた。
それを聞いた時にはショックを感じると同時に面白がった。 だって、「モロッコのダニ」アレルギーなんて滅多にあるもんじゃない。 時々そこが痒くなる度にわけもなく笑いたくなる自分ってひょっとしてM?と思いつつも、 サハラ旅行の光景がフラッシュバックしてくるコージ苑である。
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