2002年10月12日(土)


僕は決して明るい人間でもないし、思いやりと慈愛に満ちた人間であるとも言えない。
けれど僕は血の通った人間だ。

僕たちは、子育てと同時に里親探しをせねばならない境地にいた。
ご主人様もクマたんも、あらゆる友人らに連絡を取ってくれた。
僕もHPに写真をアップしようと、デジカメを持っている唯一の友人、キジに連絡を取る。

僕  「お願いがあるんだけど、仔猫が家の前に落ちててね、
    今その子たちの里親探ししてるの。で、デジカメで写真とってくれないかな。
キジ 「はぁ? 拾ったの? 野良猫を? アンタ馬鹿じゃないの?」
僕  「…え」
キジ 「アパート飼っちゃ駄目じゃん。なにエンガワの子?」
僕  「いや違うみたい。親が分からないから僕が育ててるんだよ。
    まだミルクしか飲めなくてネズミみたいに小さいんだ。
    見てられなかったんだよ。頼むよキジ」
キジ 「えー面倒くさい」
僕  「キジだったら、目の前に死にそうになってる仔猫がいたら助けるでしょ?
    明日の朝には死んじゃうって分かってるのに放っとけるの?」
キジ 「そりゃかわいそうだけど、野良なんだから仕方ないじゃん」
僕  「…(絶句)」
キジ 「ていうか、今高崎いないし」
僕  「お願いだよ…頼むよ…命がかかってるんだよ…たった一枚でもいいから…」
キジ 「あーわかったよ、じゃあ学校ある日にしてよね」

涙が止まらなかった。
実家には猫がいて、以前飼っていた猫が死んだときは一日中泣き通しだったキジが。
そのキジが、野良は死んで当然だと言いのけたのだ。
僕は、里親になってくれとも、里親探しに協力しろとも、猫の世話をみてくれとも
一言も言っていない。
ただ、写真を撮って欲しいと頼んだだけだ。
それなのに、「面倒くさい」の一言でそれを切った。
この子達が望んで野良になったわけではないのに。
寒空の下で打ち震える毛玉を、彼女は何とも思わずにいられるのだろうか。

僕は、キジを軽蔑する。



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