夕暮れの中、なんとなく帰る気が起こらず岩場に腰掛けていた。自分がいくらあがいたところで今帰れる場所はあそこしかないと知っているし、別に不満がある訳でもない。ただ、何故だか分からないが、自分が枠の外の生き物ような気がしてならない。
「何にしてるの?」 「え?」 気がつけば隣に女の人が立っていた。先ほどまで誰もいなかったのに。いずれにせよ見たことのない女性であるにはかわりなかった。 「別に」 「そう」 彼女はそれ以上なにも聞かず岩に腰掛けた。 特に俺に興味はないのかただ海のかなたの水平線を見つめている。
日が水平線の中に沈み出した頃、彼女は立ち上がり言った。 「そろそろ、帰ろうかな。あなたも家出してないで早く帰りなさいね。」
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