2003年03月12日(水) |
The Hours 美しい瞬間 |
アカデミー賞ノミネート・作品「The Hours」(邦題 めぐりあう時たち) を観た。 久々に心を打たれるアメリカ映画を見たという感じがした。 映像も音楽も美しい映画だが、そこに溢れる女性たちが語る言葉が何よりも素晴らしい。 この映画はヴァージニア・ウルフの「ダロウェイ夫人」をモチーフに イメージをひろげて、異なる時代と場所に生きる三人の女性の1日を描いた物語。
それぞれの人生の時、誰でも何度かは経験するような美しい朝。 まばゆい、愛する家族、咲き誇る花の香り。 これから素晴らしい時がはじまるという予感を感じることの幸福。 そして、その日常生活の中に潜む死の影。人生は常にドラマチックだ。 自分は何のために生きているのか? 生きていて欲しいと思ってくれる相手が いるから生きているわけではない。 愛は人を幸福にするがどこまでも 人は孤独で、その精神の、肉体の病は誰にも救えない。
傍からは、何の変化もないように見える日常の中で、登場する女性たちの精神は 葛藤し、生と死のはざまで揺れ動き、二度とない今日1日を送る。
死を選んでも、生を選んでも、精神の暗闇で1人孤独感じて苦しんでも、それは私の権利。と劇中のヴァージニア・ウルフは言う。
すべてのものは過ぎ去って、失われていくが、人生には美しい瞬間があるということ。死や喪失は悲しいことだけれど、人生のその時にあった幸福や愛は不変のもの。安易な感傷ではなく、人の生の事実として豊かに深くそのことを感じさせてくれる映画だった。
ある程度の年齢以上の多くの女性なら、こんな風に自分の人生に惑い、精神的にギリギリのところでどうにか生きることを選択した経験があるのではないか?と思う。
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