女の世紀を旅する
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2007年12月03日(月) 妻はなぜ離婚をしたがるのか


『妻はなぜ離婚をしたがるのか』<富田たかし>(日本文芸社刊)





 熟年離婚が相次いでいる。圧倒的に多いのは、妻が離婚を申し出て、夫は晴天の霹靂(へきれき)にたじろぐパターンだ。妻が離婚したくなる原因は、日本特有の夫婦関係にあると、心理学者の富田たかしさんは言う。『妻はなぜ離婚をしたがるのか』(日本文芸社刊)を書いた富田さんは豊かな夫婦関係を築く秘訣(ひけつ)を次のように語った。

   ◇   ◇   ◇

 明治以降、日本の家庭は、家父長制の下に築かれてきました。しかし、あくまでそれは表面上のことで、実権を握っているのは女性、つまりお母さんでした。家父長制が崩れてきた現代でも、実情は同じ。昔も今も、男はお母さんにものすごく依存しています。日本は伝統的に母親がとても強い社会なのです。それは健康的でいいことですが、一方で困った事態ももたらしました。 


 日本のお母さんたちは、子供が出世競争、受験競争に勝ち抜けるよう、身の回りの世話をせっせと焼きます。「あなたは勉強だけやってればいいのよ」という風に、生活面での面倒なケアをすべてしてあげるわけです。すると子供は、永遠にお母さんを必要とする人間になってしまいます。その子が結婚すると、結婚生活の中でも母親を求めます。


 新婚のうちこそ男と女、夫と妻の関係ですが、子供が生まれると関係性が変化します。奥さんはいよいよお母さんになるわけです。パワーアップし、家庭での実権を握り始めます。そのとき夫は居場所を失い、家庭の長男の座に逃げ込むのです。そこは独身時代と同じ環境で、とても居心地のいい場所です。夫と妻から、擬似母と擬似長男の関係へ。「擬似母子関係」の始まりです。


「擬似母子関係」がスタートすると、大きな問題が現れます。セックスレスです。なぜなら、親子間でのセックスはタブーです。だから、意識の上で親子関係に陥った夫婦は、セックスレスになるわけです。


 妻が出産するとき、夫は禁欲を余儀なくされますが、それをきっかけにセックスレスに突入するケースが多いようです。まじめな夫なら我慢しますが、ちょいワル夫たちは、浮気をしたり風俗に行ったり、外部で性欲を処理し始めます。そうして、ときどき外で浮気ともつかないことをする程度で落ち着き、妻と性交渉がなくても平気になってしまう。


 男らしく、女らしく振る舞うという広い意味でのセックスがあってこそ、男女の関係が成り立ちます。そんなの照れくさいですか?だとしたら、「擬似母子関係」にどっぷり浸っている証拠です。


 外で恋愛をするならまだしも、風俗産業を利用する人が多いのが現状です。風俗は、こちらが気を使う必要はなく、気を使われる一方です。つまり、システム全体が「擬似お母さん」なんですよ。お金で買うお母さんなんです。コミュニケーション能力はまったく磨かれません。家でも外でもお母さんに面倒を見てもらっている男は、どうでしょう? 男としてちっとも魅力的ではない。それが女性の本音だと思うんですね。



●妻のアイデンティティー・クライシス

 子供がいる間は、「擬似母子関係」によって夫婦間も安定しますが、子供が巣立つとそうもいかなくなります。妻は母親であることに変わりはないものの、実際の母親の役割からは解放されます。母親であるからこそ、自分を保てていたのに、それがなくなる。自分のアイデンティティーを失ったような気分になるのです。それが、妻たちの危機、「アイデンティティークライシス」です。彼女たちは、これからの自分の生き方を真剣に考えなければいけない時期に差しかかるわけです。


 そんなときにふと周囲を見渡すと、今一緒に住んでる「長男もどき」が夫だったことに気付く。ところが「長男もどき」は夫としての役割をちっとも果たしてない。しかも、これからは自分の好きなことをするとか勝手なことばかり言っている。妻に経済的な保障があれば、何んでこの人と一緒にいなきゃいけないのだろう、別れたいという気持ちになって当然です。


 日本人の結婚は「運転免許型」なんです。いったん結婚したら、事故を起こさない限り自動更新できるという感覚です。ところが、欧米では結婚は「自転車型」で、こぎ続けなければひっくり返ると思っている。だから一生懸命、夫婦関係を維持する工夫をするわけです。日本の多くの男性はその努力もせず、長男の座に入ったことすら、コロッと忘れている。だから、離婚を突き付けられると「俺は何も悪いことしてないじゃないか」という反応になります。確かに悪いことはしてないかもしれないけど、いいこともしていないんです。



●夫婦のシナリオを変えてみる

離婚という現実を突き付けられたら、どうしますか? 僕は、離婚するのも一つの手だと思うんです。お互いに新しい可能性を広げていけるなら、悪いことではないと思います。しかし、一方で、たとえ「擬似母子関係」であろうと、過去を共有しているパートナーは貴重な存在なんだってことに気付いたほうがいい。


 人間は同じ相手に何度でもほれ直すことができるんです。結婚、出産などの際に経験したんじゃないかと思いますが、生活の舞台と役割が変わると、相手の新しい面が見えて、ほれ直すものなんです。そこで、「擬似母子関係」が定着してしまった夫婦に、僕が提案するのは、これまでのシナリオを捨てて、新しいシナリオを作り上げていくことです。


 舞台設定や配役を変えて、意識的にポジティブに関係を楽しむのです。例えば、こんなシナリオが考えられます。家庭を一緒にマネジメントしていく「共同経営型」、同じ趣味を一緒に楽しむ「同士型」、お殿様と家来のように支配・被支配の擬似体験を楽しむ「SM型」……。新しい関係を、遊び感覚で楽しむことによって、新たな魅力も見えてきますし、今までやらなかったこともするようになる。ここが大事なんです。



●相手を受け止めることが大切

 これからの10年、20年を、夫婦でどう過ごしていくか。それを考えることが、新たなシナリオへの第一歩です。もちろん、生活を共にしてきた大切なパートナーに自発的に愛情を注ぐことが前提です。そして、もう一つ大事なことは、相手をちゃんと受け止めること。相手の行動や気持ちを受け止めて、感謝し、褒めてあげることです。


 「夫が話を聞いてくれない」と嘆く奥さんがいますが、相手に話を聞いてもらうためには、まずこちらが聞かなきゃいけないんですよ。一生懸命聞いてあげると、相手はうれしいからますます話すようになります。そして、聞いてくれた人の話を聞くようになるんです。してほしいことは、まずは自分から、の姿勢が大切なのです。


 有限の中でものを考えることも大切です。中年期を迎えると、自分に残された時間は有限だと気付きます。そして、今という時間は、二度と戻らないのです。時間だけじゃない、自分にできることにも限りがある。我々の人生はそういうものだらけなんです。


 夫婦関係なんていつかよくなるだろうと思っていないでしょうか。でも、明日もあさっても元気で過ごせる保障なんてどこにもないのです。だとすれば、いつかではなく、今の生き方を変えたほうがいい。それが豊かな未来を作っていくんです。


★以上の著者紹介
富田たかし(とみた・たかし)
心理学者。駒沢女子大学人文学部教授

略歴
1949年生まれ。上智大学大学院文学研究科博士課程修了。専門分野は「認知心理学」。犯罪事件から恋愛まで、人間の深層心理を、独自の視点で分析する手法には定評があり、様々なメディアで活躍中。おもな著書に、『「ハナシ上手」になる心理術』(角川書店刊)、『詐欺の心理学』(ベストセラーズ刊)など。




★【夫が妻に感じる不満トップは整理整頓下手】 明治安田生命保険の調査

パートナーは互いに相手を「片づけ下手」だと思い込んでいる節がある

 長く連れ添った夫婦でも、意外に相手の本音に気付いていないものだ。夫が妻に感じる不満のトップが「整理整頓ができない」だと聞いて、驚く女性は多いはず。2位は「料理の手抜き」、3位は「体型が変わってきたところ」だそうで、このあたりはなかなか直接自分の口からは言いにくそうで、無記名のアンケート調査だからこそ言えた告白かも知れない。

 明治安田生命保険が夫婦を対象に実施した、夫婦をテーマにしたアンケート調査の結果だ。対象は20〜59歳の既婚男女。回答者の世代はほぼ均等だ。


 夫婦それぞれに「やめてもらいたいこと」を挙げてもらったところ、夫が妻に望むのは、「整理整頓ができない」(25.6%)、「料理の手抜き」(14.8%)、「体型が変わってきたところ」(13.4%)の順だった。以下、「朝寝坊」(11.2%)、「気が利かない」(9.7%)と続く。一般には女性にきれい好き・片づけ上手のイメージがあるが、意外に夫は妻の整理整頓を評価していないようだ。もしかすると、妻の整理ロジックが、夫の論理とうまくかみ合わず、「片付いていない」と映ってしまうのかも知れず、一度夫婦で話題にしてみてもよさそうだ。


 男はいい加減に物を積み上げているように見えて、実は自分なりのルールで置き場所・並び順を管理しているところがある。そういう男の目から見ると、妻の片づけ術は一見、きれいに見えて論理が破たんしているように見える場合がある。実は「整理整頓」への不満は妻からの声でも第2位(22%)に入っていて、夫婦は互いに整理法に不満を抱き合っている様子がうかがえる。


 妻が「やめてもらいたい」と思う第1位は「たばこ」(22.9%)だが、「整理整頓」とほぼ同数。3位以下は「お酒の飲み過ぎ」(18.2%)、4位「浪費癖」(16.9%)、「気が利かない」(16.7%)の順だった。夫は挙げていない「浪費癖」が食い込んでいる点は興味深い。


 夫婦の会話時間はかなり少ない印象だ。男性40代は平日1日当たり30分以下が50%に達した。1日に30分すら妻と話していないという夫が自覚ベースでは半分もいるわけだ。女性40代はもっとすごい。56.8%と、過半数が30分以下と答えた。30分以下の比率は男女とも40代が突出して高い。次は男女とも50代。男性は42.1%、女性は43.8%が30分以下と答えている。30分〜1時間も50代男性の37.2%、同女性は22.5%を占めた。ほぼ3分の2が1時間以下しか夫婦の語らいの時間を持っていないという結果は、「あうんの呼吸」「以心伝心」と見るべきか、夫婦仲の冷え込み、相互無関心と見るべきか。


 この疑問に明治安田生命保険の調査は一歩踏み込んで見せた。平日の会話時間30分以下の夫婦が「配偶者に愛情を感じているか」を尋ねた。その結果、「愛情を感じていない」の割合がほぼ3分の1の33.4%に達した。とりわけ、30分以下の妻は「愛情を感じていない」の率が41.1%にのぼる。会話が少ないと、夫婦の愛情も薄れてしまいがちになるようだ。


 しかし、言葉は夫婦仲を支えもする。夫婦が最も愛情を感じる言葉として挙げたのは、夫は「ご苦労さま・お疲れさま」がトップ。次いで「ありがとう」、ぐっと離れて「愛してる」だった。ただ、一般的には「ご苦労さま」は目上には使わないとされ、夫婦に明確な立場の上下はなくても、言われた夫が逆にカチンと来る可能性がなくはない。「お疲れさま」の方が無難だろう。


 妻は「ありがとう」がダントツのトップで、「愛してる」「ご苦労さま・お疲れさま」と続く。言われたい言葉がこんなに違うというのも、普段の暮らしではなかなか気付きにくいだろう。せっかく分かったパートナーの「内なる声」。きょうからでもお互いに声を掛け合ってみよう。「お疲れさま」「ありがとう」と。


カルメンチャキ |MAIL

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