今年もこの連休中に、夏祭りが開かれた。
子供の頃から、わたしは夏祭りを楽しみにしていた。 夕方から聞こえてくる太鼓の音や、提灯にわくわくしながら、 夜の訪れを待ったあの日。 特別なお小遣いを貰って、浴衣を着せて貰って、 近所の子たちと誘い合って行った夏祭り。
わたしは生まれ育った町に、今も住んでいる。 その夏祭りもまだ開かれている。 でも…
この辺りは団地の立替計画が進んでいて、だんだん引っ越す人が増え、 ゴーストタウン化しつつある。 遅くまで家々の明かりが灯り、子供達の声が外まで聞こえていた あの明るい夏の日々が懐かしい…
お祭の矢倉(やぐら)も3階建てで、1階では子供会の皆が輪を作って 踊ったりして、矢倉に上がるのが楽しみだった。 夜店もそれはたくさんあって、お小遣いの小銭を握りしめて どれを買おうか、どきどきしながら品物を眺めた。
おもちゃを売る屋台の店先で、普段いつも見なれているはずの 可愛いペンダントや指輪も、夏祭りには何か別のものみたいに きらきら光って、誘惑していた。
わたしは、窪みにビー玉をひっかけて飲むラムネが大好きで、 そして飲み終わった後、ビンを返しに行くとお金が戻ってくるのが 何とも嬉しかったものだ。 得をしているわけじゃないのに。
わたあめ、あんずあめ、べっこうあめ、たこやき、 やきそば、金魚すくい、ヨーヨー釣り…
それが今は、年々寂れて行くばかりだ…
矢倉も足場と太鼓を叩く所だけになった。 提灯が減って、お祭の広場も暗くなってしまった。 夜店がめっきり減ってしまった。
変わっていないものがあるとしたら、それはまだ わたしが夏祭りを楽しみにしているということ。 娘も毎年、わたしに浴衣を着せて貰って、友達と誘い合わせて お祭に行くのを楽しみにしている。 夏祭りが大好きな心だけは、変わっていない…
お祭のあとは、何となくもの悲しい。 夏を見送る寂しさを感じるからだ。 それが毎年、もっと寂しく感じるようになってしまった。
来年は、夏祭りができるのだろうか…
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