Home Page
「槞梛俚庵(るなりあむ)


時折綴

2006年01月22日(日) 一夜橋 〜蟲師〜

昨日の雪も、夕方には止んでしまい、ちょっとがっかり。
きっと朝には、ばりばりに凍っているんだろうな。

熱もしっかり下がったのだけれど、風邪がぬけきっていなくて。
風邪薬を飲むと眠くなってしまうから、一眠りしてから4時に起きて「蟲師」を観る。

こういう時ばかり、何処からか「根性」が沸いてくる。

今夜のお話は「一夜橋(ひとよばし)」。

或る深い山間に、取り残されたような村がある。
深い谷に阻まれ、そこへ通う人もない。
旧いしきたりに縛られた哀しい村だ。

20年に一度、たった一晩だけ、谷に橋が架かるという言い伝えがある。
それを渡れたものは、必ず幸せになれるという。

でも橋から落ちたら―――

或る日、谷へ落ちた者がひょっこり戻って来る。
でもそれはヒトとは呼べぬ者となっていて、一夜橋が架かる夜に死んでしまうという。
「谷もどり」と謂われていた。

この一夜だけの橋は蟲のなせる業で、谷に棲息している蟲が、より良い環境を求めて渡りをする時に
橋が架かるように見えるのだと言う。

ただこの谷があまりに深すぎて、陽の光が届かずに、蟲は渡りをするための力を蓄えられない。
それで谷へ落ちて死んだものの身体に入り込み、地上へ上がってくる。

渡りの夜、蟲が抜け出てしまえば、仮の宿になっていたその身体は…。


この村に住むゼンとハナも、幸せを求めて橋を渡ろうとしたけれど
ハナは迷って引き返し、深い谷底へ落ちて行った。

でも彼女は、或る日、谷もどりになって帰って来た。
けれど、すっかり彼女は彼女でなくなっていて。

それでも愛するヒトが生きていてくれたら、幸せだろうか…。

ハナがハナでなくなっていても、生きていることに変わりはなかったから
ゼンは村八分になっても、つらくても、彼は生きていくことができた。

それが異形のモノに生かされていると知っていても…。

哀しい恋は、哀しい結末に終わる。

ギンコはゼンを連れ出そうとしたけれど、ゼンも谷底へ落ちて行ってしまう。
自らそれを選んだかのように。


蟲の営みは、自然界の営み。
所詮、ヒトは介入できないものなのか。

命、愛情、憂い、そしてしきたり、運命―――
そういう動かせないものに思いを馳せた、お話。

次週は「籠のなか」。
これも深く考えさせられるお話。



 < 過去  INDEX  未来 >


冰月まひな [MAIL] [HOMEPAGE]