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小春の夜ご飯を準備していたときのこと。
いつもご飯の気配に喜び勇んで私の足もとでクルクルと走り回っている小春が 気づいたらいなくなっていた。
まだまだ目の離せない幼犬なので、不安になり「小春!」と呼んでみた。
反応なし。
リビングのテーブルの下をのぞくと、小春は小さくうずくまっていた。 まるで隠れるように。
「小春、小春、どうした?」
覗き込む私を無視するようにずっとうずくまっていた小春。
次の瞬間
「ゲーッ!!グゲーッ!!!」
と苦しそうに顔を前に突き出した。
「小春っ!?大丈夫か?」
テーブルの下から出てきた小春は、 今度は私の目の前でゲーゲー苦しそうにもがきだした。 そして少し緑がかった透明な液体を吐き出した。 それも口から出てくるまでとても苦しそうに。
「小春!!どうしたの?小春っ!?」
ただおろおろする私の目の前をフラフラと横切り、再びテーブルの下へもぐりこんだ。
そしてテーブルの下で再び嘔吐して、その直後ものすごい悲鳴をあげ身体を痙攣させた。
ただただ小春の名前を叫び、こわばる小春の身体を急いで抱き寄せた。 私に抱かれた瞬間、小春はいつもの小春に戻った。 しかし小春本人も驚きが隠せないようでボーっとしている様子。
小春を抱えながら吐いたものを確認した。匂いもかいでみた。
どうしよう、どうしよう…。
病院もとっくに終わってしまっているし、旦那助は残業で遅くなるし…。
落ち着け、落ち着け…。 とりあえず病院に電話してみよう。
小春を抱きかかえながら診察券の電話番号をプッシュした。
案の定もう病院は終わっていた。
病院からもらった手帳をみると、 犬に異変が起こった場合の対処方法が記載されていた。 それによれば、吐いた内容物に血液が混じっていなければ様子をみてから病院へ行けばいいらしい。 そのほか、緊急で駆け込まなければならない症例が挙げられていたが どれも小春には当てはまらなかった。
小春の様子はすっかりいつもの元気な小春に戻っているし その後ご飯を食べさせたところいつも通りモリモリ食べていたし…。
多分大丈夫なのだろう。 今日はとりあえず様子をみて、明日すぐ病院へつれていこう。
とりあえずほっとしたところで涙が出てきた。
「クロ助…、クロ助…。」
なぜかクロ助の名前を呼びながら。 小春がもし痙攣を起こした直後そのまま突然死んでしまったらどうしていただろう…。 クロ助みたいに突然死んでしまったら…。
そう思ったらクロ助が死んだあの夜がよみがえってきてひとりで思いっきり泣いた。
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