宇宙 ほし の下で…



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2002年10月12日(土) 『飛び交う気持ち。駆け巡るもの。−2−』

何も知らないお母さんは、『今度、一度ゆっくり遊びに来てください!何もないところですけどすごくいい所なんです。』と話しを続ける。
私は「もう行けないんです。行くことがあっても多分、お伺いすることはないと思います…」そんな言葉たちを胸に隠して、『はい!どうもありがとうございます!ぜひ!』と答えた。
するとお母さんは気を使って『こちらでホテルくらいとらせて頂きますから…』とまで言ってくれた。申し訳無くて慌てて『いえ、そんな、とんでもないです!あの、大丈夫ですから。本当、お気持ちだけで十分です!どうもありがとうございます。』などと答えた。


お母さんとの会話は、楽しいのだけれども苦しくて、痛いのだけれども楽しくて、辛いのに自然に笑顔になれて…不思議な感じだった。
「どうして今なのだろう…」と切なくなった。


ホテルをお断りすると、『うち、本当に狭い所なんですけど、遊びにいらして下さい。本当にね、狭いところなんです。でもいいところですから、一度本当にいらして下さい。』と、何度もいってくれた。
その度に私は哀しみや切ない気持ちや後ろめたい気持ちをおさえて、『はい。』だとか『ありがとうございます。』だとか『とんでもないです。』という言葉を声にだして繰り返し伝えた。そして、その度に心の中で深く深くお詫びした。


彼のお母さんは他にもいろいろな話をしてくれた。
親が子をおもう気持ちがひしひしと伝わってきた。そんな時、苦しさや切なさだけでなく「愛されてるんだなぁ…」と穏やかな気持ちが生まれて、何故か安心した。
お母さんは最後まで『我侭な子ですけど、これからも仲良くしてやって下さい。』だとか『一度遊びに来てください。』と言ってくれた。
私は最後まで、きっと、上手な嘘を吐いてしまった。
けれども、感謝の気持ちや嬉しい気持ちたちに嘘はなかった。本当にありがたいと思ったし本当に嬉しかった。今思うと、自然と笑顔になって話してしまったのは楽しく感じたのは、多分、そういったところに嘘がなかったからだと思う。


どのくらいの時間話していただろう…。
電話を切った途端、ふっと寂しくなって、いろんな気持ちが混ざりあって、涙を堪えることができなかった。




生涯、言葉になどできないであろう気持ちが今ここにある。
私が大切に思っていて、これからもずっと大切にしたい、どんな人も持っているであろう「気持ち」というものを無にしてしまったような、裏切ってしまったようなそんな気持ちもここにある。
元気の良い、素敵なお母さんだった。

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