-殻-
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帰りの新幹線で、君は必ず眠ってしまう。
僕は卑怯にも、それを知っていて君に通路側の指定券を渡す。 いつもは窓側を渡すようにしている。 でも君は、「別に窓側じゃなくてもいいよ」って言ったよね。 まあ、だからというか、何にしても僕は意識的に通路側を渡したんだよ。 思惑通り、と言えばそうだね。 案の定、新幹線が動き出してから10分もせずに船を漕ぎ出した。 通路側は寄りかかるところがないから、自然と窓側に頭が傾く。 その先には僕がいる。 僕はPCで仕事を片付けながら、 僕の肩に凭れ掛かる君の髪の匂いを嗅いでいる。 抱き締めたい。 このまま、君の匂いを貪りたい。 それは遠く、叶わない願い。 こんなに、こんなに近くても、君には届かない。 君は、どんな夢を見たんだろう。 僕の肩に凭れて見る夢は、幸せな夢だったろうか。 君の寝顔は、流れた前髪に隠れて見えなかった。 INDEX| PAST| NEXT | NEWEST |